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2013/01/26

DVD「苦役列車」感想

 芥川賞受賞作を映画化したものですが、原作は未読です。

 以下ネタバレありますのでご注意下さい。

ネタバレ注意報! ネタバレ注意報! ネタバレ注意報! 

 「モテキ」でヘタレな男の子を演じた森山未来君が、またまたヘタレな青年を演じます。セカチューでヘタレデビューして以来、こういった役ばかりピッタリはまってしまって、もうすごいとしか言いようがありません。演技ではなく、森山君本人がヘタレそのものにしか見えません(笑)。
 さてストーリーですが、普通の人は、森山君のあまりのヘタレ加減に、見ていて嫌気がさすと思います。「中卒の日雇い労働者のくせに偉そうに言ってんじゃねえよ」とかしょっちゅう言うのですが、それってそのまんまあんたの事じゃないか! と突っ込みたくなります。映画でも高良君がいつも森山君の横で「それ言っちゃあ・・・」みたいな微妙な表情してますから。
 設定として森山君が小学校の頃、父親が性犯罪者として全国ニュースで放送され、それ以後まともな人生を歩めなかったということになっています。
 そういう訳で、森山君は人と普通に会話するスキルが欠けています。それ言ったら相手が引くというのがわかりません。あるいは、わかっていても劣等感の裏返しが邪魔してそれを止められません。一方的に自分の気持ちを相手に押しつけて、嫌われたり殴られたりする。その繰り返しが延々と続きます。とても自虐的です。一昔前のイタ~イ私小説にこんなパターンが沢山あったような気がしますが、今なぜ再びそのパターンが脚光を浴びるのかがわかりません。原作は何かもっと実験的な書き方をしていたのでしょうか? 芥川賞をとったのだから、旧来の作にはない新しい何かがあったのでしょう。ただ、映画からはそれがあまり感じられませんでした。
 本作、この自虐的シーンの繰り返しが、「笑える。面白い」という人もいるかもしれません。でも私は嫌気がさしました。観る人によって評価が真っ二つになりそうな映画です。

 前田敦子はなかなかいい演技でした。誰がどう見ても怪しい青年でしかない森山君に「友だちになってください」と申し込まれて「いいですよ」と即答したりとか、高良君と三人で海に行き、パンツ一丁で海に入った男二人に「こっち来いよ。気持ちいいぞう」と言われて「よーし」とか言いながら下着姿になって海に入ったりとか。常識的にありえません。そういう、かなり変なキャラクターの女の子を演じているのですが、前田敦子のキャラにぴったりです。前田敦子にあわせてこういうキャラを作ったのかと思うほどです。原作読んでないんでわかりませんが、小説でもこういうキャラなんでしょうか?

 映画の演出はかなり怪しいです。突然説明的なテロップ入ったりします。何日後に誰々はこういう理由でこうなったとか。でも映画って普通そういうの、映像で表現するんじゃないの?
 最後の演出も怪しいです。ケンカで殴られてあちこちあざだらけの森山君が、パンツ一枚で道路を走り出します。いきなり前田敦子と高良君が海に向かって走り出すのですが、彼らには森山君が見えません的な演出。二人を追って海に向かって走る森山君。突然砂浜に穴があったらしくずぼっと消える。落下した先は下宿の前のゴミ置き場。立ち上がって部屋に入り、いきなり小説を書き始めて終わり。何か言いたいんでしょうけど、なんだかなあ。
 このシーン、まず、なぜ急に小説を書く気になったのかがわからない。同僚の中年親父がテレビで歌手活動を始めたのを見て、自分も夢をかなえようと思った? 何のために小説を書くのかもわからない。自分をバカにした世間を見返すため? 自分は底辺を生きる人間だけど、趣味は小説を読むこと。それをアピールしたい? 親の犯罪歴のせいで子どもが差別を受けるのはおかしいと声高に言いたい? 映画観ただけではよくわかりません。

 怪しい映画です。 

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