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2012/11/04

DVD「少年と自転車」感想

ベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」
 あまりに有名な曲で、しかも「皇帝」という名のとおり、豪華絢爛なイメージばかり持ってしまったため、高校時代に聞いて以来、ほとんど聞き返したことがなかった。超有名曲なのに、レコードもCDも、一枚も持っていない。
 この曲の第2楽章アダージョが、こんなに効果的に使われるなんて。
 こんなに美しいメロディーをベートーヴェンは書いていたのか?
 本当にびっくりした。
 まったく気がつかなかった。ごめんなさいベートーヴェン。あなたが素晴らしい作曲家であることを、この歳であらためて再認識しました。

 さて、このアダージョ、映画の中で四回ほど使用される。一度目は少年が施設から脱走しようとして、職員に捕まるシーン。二度目は父から面会を拒絶されるシーン。三度目は父のためにと思って犯罪にまで手を染めた少年を、父が強く拒絶するシーン。
 いずれもアダージョの冒頭部分、弦楽器が奏でる哀しみに満ちたシンプルな旋律(三つの音符が、ゆっくり階段をあがるように二度流れる)がバックに流れる。本当にシンプルな旋律なのだが、深く心に響く。父から見捨てられた少年の絶望が、やり場のない哀しみがスクリーンの前の空間を満たしていくかのようだ。
 だが、四度目にこの曲が流れた時、それまでの弦楽器による冒頭部分だけでなく、それにピアノのソロ部分が続く。
 これが、なんともストーリーと深く関わりのある曲の使い方なのである。
 このラストシーンは、罪を犯した少年が、それ相応の罰を受けた直後の場面なのだ。とぼとぼと自転車をこいでいく孤独な少年の後ろ姿が画面から消え、同時にタイトルバックが流れる。その瞬間に、この美しいピアノのメロディーが流れる。
 贖罪? 許し? 罰を受けたことによって、神は少年を許したのか? だとしたら、この後、少年は新たな人生をスタートさせることができるのかもしれない。ピアノは、微かに見えてきた少年の明るい未来を優しく慈しむような、そんな神の視点を象徴的に表現している。そう感じた。

(この後「皇帝」のCD買いました。仲道郁代とヤルヴィの組み合わせ。なかなかいいです。)

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