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2012/10/21

DVD「ゾンビヘッズ 死にぞこないの青い春」感想

 ゾンビ映画は星の数ほどあると言われるが、本作はなかなかにオリジナリティがあると思う。
 何が違うかというと、映画の冒頭、主人公はゾンビとして生き返っちゃうのだが、ゾンビなのに、普通に知性もあるし、生前の記憶もあるのだ。人間食べちゃダメみたいな倫理観もあるし、昔の恋人に会いたいみたいな感情もある。なにより普通に走ります(笑)。
 でも、ちぎれた腕が、すぐにくっついちゃうのは「デビルマン」のパクリ?
 で、ストーリーが進むと、主人公は軍事目的で開発された蘇生技術の実験台にされたらしいことがわかってくる。技術がまだ不安定らしく、普通にゾンビとして復活する個体もあれば、主人公とその仲間のように、人の心を持った「いいゾンビ」として復活する個体もある、という設定のようだ。でも、デビルマンみたいに悪いゾンビと戦ったりはしません。むしろゾンビ狩りする人間たちから、逃げ回るお話。
 「いいゾンビ」とはいえ、外見は普通にゾンビ。逃亡中に立ち寄った野外シアターの店員からは顔色の悪さを気味悪がられ、「実はエイズなんだ。あんたも気をつけて」と笑ってごまかす。いや笑えません。
 一度死んで復活してしまった主人公。生前つきあっていた彼女に会いたいのだが、でもゾンビの自分を、彼女が受け入れてくれるはずもないことはわかっていて、じゃあ自分は一体どうしたいのか、それがわからない。
 そんな彼と非常に対照的な存在として、ある老人が登場する。退役軍人である。怪しげな薬を服用している。ビンには妻の遺灰。思い出の湖で散骨するための旅の途中だという。
 彼は、もうじき死んで、愛する妻の元へ行くのだ。
  この老人の死のシーンが、非常に美しい。そして、老人の死が主人公に決断させる。どんな結末になろうと構わない。今でも自分は彼女のことが好きなんだ。ただそれだけを伝えに行こう。そして彼は彼女に会いに行く。このあたりは至極まっとうな恋愛ストーリーなのである。設定がありえない分、かえって効いているように感じた。
 低予算の映画らしく、無名の役者たちが皆なんだか魅力に欠ける。その点は目をつむろう。
 途中、お下劣なギャグを何度もかましてくるのも、まあよしとしよう。
 人の心を持つゾンビとして復活してしまった人間の哀しさ。B級映画ではあるが、ダークサイドに寄り添ったその設定が、本作を美しい作品にしていると感じた。  

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