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2012/10/28

DVD「ドライヴ」感想

 ネタバレを含むのでよろしくご注意を。

 主人公は寡黙である。ほとんどしゃべらないので、よく言えばセクシー、悪く言えばむっつりスケベに見える。
 冒頭の逃走シーンはリアルだ。車の性能と運転技術に任せた力業で逃げ切るのではない。隠れる場面では静かに隠れ、逃げる場面ではフルスロットル。きわめて頭脳的な逃走である。クールだ。
 ヒロインは子持ちのおばさん。ダンナは服役中。疲れた横顔。でも、美人(だって、役者はキャリー・マリガンだもの)。
 主人公だけでなく、本作は他の役者のセリフも極端に抑制している。例えば監督は、ヒロインが徐々に主人公に心惹かれていく様子を、ヘアピンで髪を留め、美しい耳を運転席の彼に見えるようにすることで、表現する(キャリー・マリガンの頭骨の形のよさときたら・・・)。
 主人公は数年前にこの町にやって来た。だがそれ以前に、どこで何をしていたのか、作中では語られない。卓越したドライビングテクニックの持ち主と思いきや、中盤からは、冷酷な殺人マシーンの一面が描かれる。それも、あきらかに殺しを何度も重ねた者の姿。ついには、キャリー・マリガンの見ている前で、敵を徹底的に殴り殺す。いや踏みつぶす。このシーンはショッキングだ。

 こんな残酷シーンを目の前で見せられたら、当然女の心は遠ざかるに決まっている。女はおびえる。こんな残忍な人だったなんて・・・。

 それなのに、敵を始末した後、主人公は女に普通に接しようとする。それは無理だと言うことが、彼にはわからない。あきらかに,彼は性格に何か問題を抱えている。常識的な人間の心が欠けている。狂気を抱えている。一体何が、彼をこんな人間にしたのか? どんな過去があったのか? それが本作では描かれない。だからかえってものすごく気になる。想像してしまう。

 ラストシーン、死んだと思われた主人公が、再び車をドライヴし始める。しかし「ああ生きていてよかった」と単純には喜べないのが本作。彼はもう女の所へは帰れない。彼が次に行く町では、どんなドラマが待ち構えているのだろう? だが、再び同じ事の繰り返しになるのではないか? どこかの町で再びこの男は眠らせていた狂気を爆発させるのではなか? そんな予感をさせて映画は終わる。

 ヨーロッパ的な美しい響きのエレクトロミュージックが、映画に無機質な雰囲気を漂わせる。

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