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2012/09/22

DVD「宇宙人ポール」感想

 地球に墜落したエイリアンが、アメリカの特殊機関に拘束され、様々な実験に協力させられるが、命の危険を感じて逃亡、母星へ帰るというストーリー。こうやって粗筋だけ書くと、スピルバーグの「Super8」みたいですが、もちろん本作はそれとはまったく違うベクトルで作られています。
 まずは主役のエイリアンの造形。
  「Super8」では、象よりも大きく、しかも、拘束中の拷問により、性格がねじ曲げられ、人を平気で食うという設定なため、その造形も凶暴なものでした。
 対して本作の宇宙人ポール。誰もがどこかで見たことあるような親しみのあるデザイン。それを見事な3DCGで、生き生きとかつコミカルに表現。よく見ると下腹部がぽっこり出ていて、ちょっとメタボ気味なところが笑えます。おまけに下品な親父ギャグ連発するし。
 さらに、「Super8」のエイリアンは、人を生で食べちゃうんですが、宇宙人ポールのほうは、カラスを生で食べます(ここ、笑っていいのかどうか、すごく微妙)。うまいのか? 羽とかそのまま食べてたけど、平気なの?

 本作は政府の特殊機関から逃げるというロードムービーなので、立ち寄る場所ごとに笑えるエピソードが次々に。シリアスな「Super8」とは正反対の作品です。過去の有名SF映画をパロっていると思われる部分が多々あり、元ネタがわかればわかるほど、さらに笑えることと思われます。

 日本人として、見ていて驚きを感じるのが、ヒロインがバリバリのキリスト教徒原理主義者であるところ。進化論を信じないというのは、話には聞いていましたが、本当にこんな人たちなんでしょうか? それとも、パロディー映画だから、デフォルメされて描かれているのでしょうか? ダーウィンを矢で撃つイラストのTシャツとか着ているわけです。でも、本編の制作者たちはSFマニアな人たちばかり。世界は神が作ったなんて、これっぽっちも信じていないわけです。だから、当然ヒロインは、(制作者を代表する)宇宙人ポールによって、キリスト教原理主義者の洗脳(みだらな言葉を口にしたら地獄に落ちる・・・とか)を解かれ、いきなりはじけちゃう。この時、「目から鱗」がとれて、世界がよく見えるようになりました的なエピソードがありますが、これは日本のことわざから作られたエピソードじゃなくて、新約聖書の一部をパロったもののようですね。

 ただ本作、スラングがぽんぽん出てくるので、お子様は見ては(聞いては)いけません(笑)。

 ハリウッド映画によくある「親子の和解」(「Super8」にもありました。)なんかも、本作ではさっぱり描かれません。ヒロインの父親は、最後まで頑固なキリスト教徒原理主義者のまま・・・なんでしょうかね? それとも宇宙人ポールの超能力や巨大UFO見た後、考え方変えたんでしょうか? そのあたり、よくわかりません。娘の方は、親父がどうなろうと別にそのあたりにこだわらない・・・みたいなスタンス。父親に理解してもらおうとか、全然考えてないみたい。爆発に巻き込まれて父親が死んだかと思った時は、ダッシュして駆け寄り、真剣に心配をしますが、生きているとわかったとたん、あっさり父を見捨てて走り去ります。「親子の和解」というよりはむしろ、「親からの自立」かな?

 これは少々よろしくないなあと思われる描写もあります。、大麻をスパスパやっちゃうところ。いや宇宙人ポールがですよ。でも、ヒロインもポールにすすめられて一服やっちゃう。法治国家日本の法律ではもちろん許されません(笑)。

 出演者に「エイリアン」のヒロイン、シガニー・ウィーバーがクレジットされています。「エイリアン」の制作が1979年。当時は30歳で、若くて強いヒロインを演じていた彼女ですが、本作は2011年制作。かなりお年を召されました。彼女が一体どんな役でいつ登場するのか、ぜひわくわくしながら見てほしいと思います。
 

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