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2012/06/18

DVD「ヤクザガール」感想

 ヒロインのユリコは10歳の小学生。組長の孫娘。当然「セーラー服と機関銃」系の邦画? あるいはセガのゲーム「竜が如く」系の歌舞伎町バイオレンス&小学生ヒロインものか?・・・と思いきや、なんと本作はロシア映画です。組長や組員、ヒロインのユリコは日本人が演じていますが、それ以外はロシア人やら国籍不明な人々やら。ロケ地はウクライナのようです。

 ヤクザ親分役の六平直政、ベテラン俳優さんで、実直な役をさせたら実に上手なお方なんだけど、ヤクザの親分としては、なんとも迫力に欠けて困ります。「おめえら、ただじゃあおかねえぞ」怒ってるんだろうけど、見ていて笑ってしまいます。組員役の若い二人も、松田優作(ブラックレイン)のような狂気を演じようとしてるのかもしれませんが遠く及ばず、なんだかなあ・・・という感じです。

 だがしか~し!(笑)ヴァディム・ドロフェーエフ演じるリョーハ(ロシア人)が、実にいい。女装して逃げる姿やら、海で溺れて助けられ、立ち上がって再びぶっ倒れる情けない姿やら、服役中に女が別の男とくっついたのを知って、首つり自殺しようとする姿やら、ユリコに会いにいくため、はるばる海を泳ぐ姿やら、実にいいです。その不器用な一途さがたまりません。

 さらにストーリーの展開の意外さもポイント高し。日本人の発想ではちょっと思いつきそうにない展開が、これでもかと続きます。

 例えば、逃亡中に海岸を通ると、そこはヌーディストビーチ。ユリコの捜索願い写真付き高額賞金つき新聞記事を見たヌーディストたちが、賞金目当てに白いケツ見せながら、わらわらとリョーハとユリコを追いかけるシーンの間抜けさときたら・・・。

 例えば、リョーハが逃亡中おじに頼ろうとして扉をノックする。しかし、出てきた叔父のワイフ(たくましいロシア女です)に顔面ストレート食らい、仰向けに。おじは「おれの大事な一族だぞ」そういってリョーハを、家に入れようとする。するとおじもワイフのストレートを顔面に食らって・・・。おじ、苦笑いしながら、「これが日常さ・・・毎日が戦場だ」
 さらに、ユリコを奪おうとする町のチンピラたちを撃退するために、ワイフは機関銃やらグレネードやら、平気でバンバンぶっ放すのですね。
 ロシアって日常的にそうなの?(大笑い)

 例えばリョーハがユリコを助けに行くため、海に飛び込むのですが、当然氷点下の海ですから溺れます。カットがかわり、一見日本人に見える漁師たちが、網の中の魚を甲板にドコドコぶちまけてみると、魚に混じってなんとリョーハが。意識を取り戻したリョーハは、うろ覚えの日本語で「ワシダハ ロシアカラキタ リョーハデス ムスメニオムシダイデス ギーリダヨ」(私は? ロシアから来た リョーハです。娘に恩返ししたいです? 義理だよ)と言い、再び意識を失う。普通ならこれで日本に着きますよね。ところが、この漁船は日本の舟ではなく、こうしてリョーハは再び海に捨てられる・・・おいおいおい!(大笑い)

 といったような、ぶっ飛んだ展開もすごいのですが、それよりも何よりも、ユリコを演じる「荒川ちか」が、実にキュート。いや、別に美少女というわけではないですよ。今時珍しく歯並び矯正してないし。でも「うちにもあんな子が欲しい」とロシア女に言わしめる魅力があります。なんだろうこの魅力は? 大人たちに対する気配りの素晴らしさ? お互いの国の文化を尊重する礼儀正しさ? 大事なことは何かをキチンと見抜く聡明さ? そんな雰囲気が、彼女からは感じられるのですね。彼女のしゃべるロシア語も、アールの巻き舌っぷりがすばらしいですし。

 作品のテーマとして、「義理」=「友情!」とはっきり打ち出しているところも、好感が持てます。なにしろ「ギーリダヨ」ですから!
 伏線として、リョーハがユリコに語る「二人で森に入ったら、二人で出てくるべきだ」という、ロシアのことわざ(?)を、ぜひ覚えておいて下さい。
 ラストは、わかっちゃいるけど、この伏線が効いて、ジーンときます。

 あちこち中途半端な演出や演技があり、はっきり言ってB級映画だと思います。でも、たっぷり笑えて、ちょっとしんみりくる。しかも、ロシア語特有の豪快な響きが、「多少の不具合なんか目ぇつぶれよ」って感じで、ストーリーをぐいぐいと盛り上げてくれます。やっぱり文化が違うよな。

 このまま埋もれさせてしまうには、ちょっともったいない作品だと思いました。

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