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2012/05/20

映画「宇宙兄弟」感想

 コミックは、3巻まで読んだところで、映画を観に行きました。
 原作は今も連載中。というわけで、長いなが~い原作をどうバッサリとカットするか。どこを削らすに残すのか。お手並み拝見というところです。
 結果から言えば、見事でした。
 まず、テーマをピンポイントに絞り込んできたところが成功の理由でしょう。ずばり、テーマは「純粋さ」です。宇宙に行きたい! 宇宙が大好きだ! というピュアな兄弟の気持ちが、びりびり伝わってくる作品となりました。ラスト近辺は、そのあまりの純粋さに、ぼろぼろ泣けてきます。周囲の客もみんな、すすり泣いてました。
 もちろん原作の兄は、もう少しお茶目で、もう少し計算高くて・・・つまり、もっと丁寧に、もっとリアルに兄の心理描写をしているわけですが、映画はそのあたり、思い切ってシンプルに構成。
 ネタバレになるので、詳しくは書きませんが、本作のラストの感動は、ていねいに伏線を張ってあるからこそだと感じました。見事な脚本です。絶体絶命のピンチを乗り切る時、最終的に必要なものは一体何なのか。ぜひ映画を観て、それを感じ取って下さい。
 ドラマの大半は、兄が弟宇宙飛行士になるため、5人のライバルとともに、宇宙ステーションを模した閉鎖施設で、長期間の課題に取り組む様子を描きます。SFマンガの名作「11人いる!」(萩尾望都)も、よく似た設定の作品でした。わざと思わぬトラブルを発生させ、テスト生がどう対処するかを試験官がチェックするというあたりも同じです。ただ、「11人いる!」は、宇宙船内でのテストであるため、しばしば背景に広大な宇宙が描かれ、スケールの大きさを感じさせてくれましたが、本作のテストは、地上にある宇宙航空研究開発機構 JAXA(ジャクサ)の施設内。ちょっと絵的に単調になりがちです。しかし、監督は同時進行として、月面探査に向かう弟のドラマを挟み込んできました。これによって、JAXAの閉鎖空間と広大な宇宙空間が交互に描かれる。という展開になり、これが構成としてなかなか素晴らしかったと思います。何度も言いますが、特にラスト近くのシーンは、理屈抜きに感動ものです。
 また、「11人いる!」では、女性作家らしく、きちんと恋愛の要素も入れてましたが、「宇宙兄弟」は、なにしろ兄弟の絆がメインですから、恋愛はばっさりカット。もちろんテスト生の中に、きれいで魅力的なお姉さん(麻生久美子)はいるのですが、そして、兄ちゃんはちょっとだけ、彼女の前でいいカッコしたりするんですが、それまでです。おかげで、雑味なし! 純粋に兄弟の純粋な絆がくっきりと浮かび上がる作品になりました。
 さらに、かつて人類初の月面歩行に成功したアポロ11号のクルー、オルドリンが出演していたり、宇宙飛行士の野口さんが出演していたりと、あちこちにサプライズがあるのもよかったです。
 本作を見ることで、周囲からちょっと変わった人間扱いされて、浮いていた理数系オタク人間たちが、多少なりとも明るい希望を持つことができたら、勇気づけられたらいいなと、そんなことを思いました。

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コメント

2008年『宇宙兄弟』の連載が始まった年に、宇宙基本法案が、宇宙開発を目的に限定する項目を削除し、「我が国の安全保障に資する」と改正された。
20012年4月1日からテレビアニメ放送開始、5月5日『宇宙兄弟』上映開始が国会での法案審議と同時期に行われた。6月20日の参院本会議で宇宙航空研究開発機構(JAXA)の業務を「平和の目的に限り」行うと定めたJAXA法からこの規定を削除する改定案など、宇宙の軍事利用を進める体制整備の関連法案が可決された。
これでやっと日本もJAXAを「軍事目的」で使うことが正式にできることになりました。
ちなみに作家の、小山宙哉はウィキペディアによると「作者は元々宇宙に興味があった訳ではなく、また兄弟もいない。作者の名前に「宙」の字が入っているのは偶然であり、宇宙モノを描く事になったのは担当編集の提案によるものだった。」とされている。
メディア・コントローって本当にすごいですね。

投稿: イスカンダル | 2012/06/27 14:11

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