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2012/04/29

DVD「あぜ道のダンディ」感想

 若手最注目監督 石井裕也の新作とのことですが、普通の人はなかなか見ないだろうと思われる映画です。
 以下、激しくネタバレしますので、ご注意を!

ネタバレ注意報!ネタバレ注意報!ネタバレ注意報!ネタバレ注意報!ネタバレ注意報!

 50歳中年親父二人が主人公。光石研と田口トモロヲが演じます。
 オープニングで光石研が、競馬のシーンをイメージしながら、自分のおしりに、自分の手でぺしぺしムチを入れ、自転車をこいで職場に向かいます。これはもちろん伏線。
 光石研も田口トモロヲも、変な親父です。特に前半。居酒屋で二人が飲むシーンは、見ていて結構いらつきます。特に光石研、「ちょっと見ない間に変な帽子かぶりやがってよ」などと、親友の田口トモロヲに向かって、言いたい放題です。はっきり言ってイヤなやつです。
 ただ、これには事情があって、田口トモロヲは、このところ胃の調子が悪く、ガンではないか、自分は余命幾ばくもないのではないかと、不安でしようがないのです。おまけに大学受検の子ども二人とは、この所まともな会話がない毎日。
 というような設定部分を、いらいらしながらも、がまんして見続けることができれば、中盤からは、いきなりの弾けっぷりの連続が、すごく楽しい映画になります。

弾けるシーンその1
 たとえば、光石研の妻は40歳の時にガンで死んでいるのですね。光石氏、生前の妻が残しておいたカセットテープを発見して聴く、そんなシーンがあります。普通なら「これからは3人で仲良く暮らしていってね」とか、「ごめんね、みんなを残して先に死んじゃって」とか、湿っぽい話が入っているのでしょう。実際テープの最初の方は、そんな雰囲気なのですが、このお母さん、突然「お母さん、歌います」とか言って「タラッタラッタラッタ ウサギのダンス」歌い出すのです。

弾けるシーンその2
 娘の友だちが援助交際していることを知った光石氏、彼女に向かって
「やいメス豚! 親の身にもなってみろ。(中略)大人だって金のために何か大切な物を売り飛ばしているかもしれない。でも、言い訳する時間があったら、どーんと大志を抱け。大志を抱いて跳べ。メス豚。跳べ。」
 横でこれを聞いていた田口氏、「お前、言うなあ」「ああ、ひとんちの子どもにはな」

弾けるシーンその3
 二人の子どもたちが、東京の大学に合格し、引っ越していく。そんな状況の夜、光石氏は夢を見ます。この時、夢の中の息子の髪型が、なんと七三分け! いつの時代?
 さらに夢の中で、子どもたちに向かって光石氏が何か言おうとします。
「東京行っちゃうんだね。もう会えなくなりますが、一つだけ言わせて下さい。いや、やっぱりお父さん、歌います」
 そう、お父さんもお母さんの影響受けちゃってるんですね。それどころか、この夢の中では、子どもたちまで、母親の影響受けたらしく、父親と一緒に「ウサギのダンス」を歌い踊り出すのです。おまけに仏壇の中からは、死んだはずの母親までよみがえって、このダンスに加わります。・・・絶対変だぞこの映画!

 さて、光石氏は中卒で就職したという設定で、だから、50歳になっても会社では配送係で、安月給、そのように描かれます。でも人生の勝ち負けは、そんな所にはないというのが、この映画のテーマのようです。
 では、人生で大事なのは何か? それは、子どもがちゃんとまともな大人に育つことだと、この映画は言っています。
 映画の前半では、父親との会話が全くなかった二人の子どもが,実はものすごく父親思いの、とてもまともな感覚の、優しい気持ちの持ち主だったということが、徐々に描かれていきます。特に、田口氏と、光石氏の息子が、居酒屋で語るシーンは必見。ああ、二人は親子なんだなあと、しみじみ感動します。
 光石氏は、映画のラストでそれに気がつくのですね。自分は幸せなんだということに。エンディングはオープニングの伏線が生きています。
「宮田順一、依然として後方・・・」
 そう言いながら自転車をこぐ光石氏。確かに光石氏の社会的地位は、依然として後方かもしれない。けど、幸福度なら、はるか前方にいる。そんなイメージを残してこの映画は終わります。

 もっとも、どうやって育てたら、子どもたちがこんなにいい子に育つのか、そのあたりは、本作ではあまり具体的に描かれていません。もちろん本作は、教育啓蒙ムービーではないわけですから、当然と言えば当然。ただ、予告編では「男は弱音を吐かない! 男は見栄を張る! 男は陰ながら思いやる!」などと言っているのですが、見栄を張る親のせいで、やさぐれて育った子どもの例は、職業柄今までに沢山見てきたので、ダンディ気取ってるだけで、子育てうまくいくとは到底思えません。まあ、このあたりは作者の願望、ということで。

 あと、娘役の吉永淳、モデル出身とのことですが、ナチュラルな太眉の美人さんで、たいへん好印象を抱きました。今後の活躍が楽しみです。

 

 なんだかんだ書きましたけど本作、かなりおもしろかったです。

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