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2012/01/09

映画「源氏物語 千年の謎」感想

 ズバズバとネタバレします。気にする方はこの後読まぬよう。

 本作は紫式部の「源氏物語」が原作ではなく、高山由紀子(日本画家高山辰雄の長女)の「源氏物語 千年の謎」が原作です。従って、源氏ファンの方は、「おいおい、そんな解釈おかしいだろ」と、突っ込みまくりながら本作を鑑賞するのがよろしいかと思われます。
 紫式部が藤原道長の誘いを断った話は紫式部日記にありますし、式部に続きを早く書けと催促したり、勝手に書きかけの作品を読んだりしたらしいので、二人の関係をいろいろ邪推していくと、本作のようなストーリーにもなるのでしょう。しかし、道長にやられちゃった腹いせに、「あんたのことを主人公にした本を書いてやる。」という怨念でできあがったのが「源氏物語」という作者の説は、おもしろいけど、紫式部の性格を考えると、ちょっと違うんじゃないかと思います。そもそも私の頭の中では、道長=お腹周りのたっぷりした中年メタボおじさん・・・的なイメージがあり、決して生田君(源氏)や東山君(道長)みたいな、すっとした体型ではないのです。
 次に六条御息所。本作は、彼女が怨念でもって、浮気しまくる源氏を苦しめます。しかも、直接源氏を苦しめるのではなく、源氏と関係を持った女を次々ととり殺していくという、いわば間接的真綿で首締め状態なわけです。紫式部=六条御息所、源氏=道長、そういう描き方をしています。作品の中で、道長に復讐する・・・そういう執筆動機って、ありえるのかなあ?
 おまけにラストシーンでは、藤壺に出家されて失意の源氏が、橋の上でなんと、作者である式部とすれ違うシーンがあります。この時、源氏は「どこまで私を苦しめれば気が済むのだ?」みたいな恨み言を作者に言うのですね。ごもっとも。あんたの情念のせいで、こんなに主人公は苦しんでいるわけですから。ところが、式部の返答は「あんたみたいなイケメンさんは、そういう定めなのよん」みたいな(笑)。いや、実際の道長はイケメンさんじゃないでしょ? でもって、源氏をイケメンさんに描いたのはあんたの勝手でしょ? そもそも、映画では藤壺のもとからシオシオ去ろうとした源氏に、必殺の一声かけて、あらぬ関係になだれこませちゃったのは藤壺さんの方でしょ? このシーン思わず「あんた、それ言っちゃダメだろ」と心の中で叫びました(笑)。ホントいいかげん許してやれよ。
 さらにトドメとして、式部との会話の後、源氏が自分の行く道を仰ぎ見ると、牛車の車輪が死屍累々といった感じでいくつもごろごろと・・・。要するに、これからも彼の人生は苦しみの連続ですよ、というメタファーらしいのですね。まったくもってお気の毒様です。
 次に安倍晴明。彼はなんと、道長の親友で、道長のピンチを救ったり、酒を酌み交わしたりするのです。でも、時代的にズレがあると思います。安倍晴明のほうが道長よりも40歳くらい年上です。まあ晴明は超能力者らしいですから、不老不死なんでしょう、きっと。さらに清明は、源氏物語の作中人物である六条御息所を調伏したり、「紫式部は、あんたにやられちゃった恨みを晴らすべく、物語に怨念をこめているぞ、気をつけろ」と道長に忠告するなど、現実を離れた世界を描いた、超エンタテイメント作となっています。っていうか、いたるところ突っ込み所ありまくりの怪作と言っていいでしょう。

 キャスティングはよかったと思います。
 光源氏を演じる生田君。二枚目だけど、ちょっとぺらっとした感じが実によろしいかと。
 道長を演じる東山君、これくらい男前なら、本作のように式部が怨念持つような物語にもなるでしょうね。納得。
 清明を演じる窪塚君、ミステリアスな雰囲気が、実にかっこいいです。こっちが主役? と思っちゃうほどです。
 六条御息所を演じる田中麗奈、怨念込めまくりです。怖かったです。今後彼女に、どんな役所が回ってくるのか、心配です(笑)。
 葵の上を演じる多部未華子、かわいいです。多部ちゃんって、こんなにかわいかったっけ? と思うくらいかわいかったです。上手に撮ってるなあ。でも、田中麗奈にとり殺されちゃう。
 あと、一条天皇を演じる東儀秀樹、作中で自ら笛を吹くシーンがあります。これ、なかなか感動的です。当時、楽器演奏が上手だった貴族って、きっとこんな雰囲気をまとっていたんだろうなあと思わせます。いやあ本職はさすが、違うよなあ。
  

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