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2012/01/21

DVD「127時間」感想

 一人で、ロッククライミングを楽しむため、キャニオンに向け出発したアーロン。だが、落石に右腕を挟まれ、谷底から一歩も動けなくなる。そして生命の限界を超えた127時間後、遂に彼は〈決断〉する――。

 というような宣伝を、公式にあちこちでしているので、誰もが「ああ、ラストは見なくてもわかりました」・・・な映画なわけです。で、まさしくその予想通りの結末となります。

 閉じ込められた空間から、いかにして脱出するか・・・というストーリーの映画となると、1年ほど前の「フローズン」が印象に残っています。吹雪の夜、誰にも気づかれることのない、停止したスキー場のリフトから、どうやって脱出するかという映画でした。両者とも、ただでさえ動きようがない画面で、絵的に単調にならざるを得ない。その上さらに今作は「フローズン」と違って、脱出方法すら、客にはバレバレなわけです。よくこんなハンデありの設定で、映画制作のゴーサインが出たものです。

 もちろんゴーサインを勝ち取っただけあって、絵的には様々な工夫がなされており、見る者を飽きさせません。特に面白かったのは、水(など)を飲むシーンです。なるほどそっちからカメラ撮りますか、と感心いたしました。

 「フローズン」との違いは、主人公が徹底して冷静さを保つという部分です。「フローズン」は、3人の男女が、浅知恵でなんとかなると判断し、結果次々に・・・という悲劇的なストーリーでした。

 本作の主人公アーロンは、飲み水がなくなることを予測して、尿を捨てずに取っておくのですね。以下にょごにょご・・・。また、後半は意識が朦朧として、幻覚が見え出します。しかし、アーロンは、持っていたデジタルカメラでそれを撮影し、幻覚であることを確認するのですね。なんとも強靱な精神力です。また、どんなに絶望的な状況に陥っても、彼は、泣き叫び取り乱し運命を呪い悪態をつく、という醜態を見せません。自らを鼓舞するように、テレビのクイズ番組のような実況中継を、手持ちのビデオに撮って残していくのです。自分が最悪の事態を迎えたときの遺書代わりなのか、はたまた、奇跡的に助かった時、あとからこの日の事を思い返すための記録なのか。

 死を目前にして、母をもっと大事にすればよかったとか、友人を、女の子たちをもっと大事にしとけば・・・などなどの後悔が、映像として描かれますが、このあたりのメソメソ感は、あってもなくてもどっちでも的な、中途半端な感じです。そんな道徳的なテーマの作品じゃないんでしょ?

 実話を元に制作したとのことですが、ラストに出てくるのは、どうやら、その本人のようです。なんだか人生をすごく楽しんでいるらしい様子が、ビシビシ伝わってくるエンディングでした(笑)。本作の魅力は、こういうカラッとドライな主人公のキャラクターにあるんじゃないでしょうか?

 
 

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