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2011/09/25

DVD「塔の上のラプンツェル」感想

 ディズニー50作目記念のアニメだそうで、劇場では3Dで上映するなど、気合いが入っていたようです。

 もとはグリム童話ですが、そのグリム兄弟が元ネタにしたのは・・・とたどっていくと、泥沼にはまりますので、元ネタとの比較は今回いたしません(笑)。

 ヒロインのラプンツェルは長い長い金の髪を持っています。この髪は不思議な力を発揮します。たとえば、歌うとランプのように光り出すとか・・・(タイトルをランプツェルと間違えて読んだ人いるでしょ?・・・そう私です)

 魔女のゴーテルが、自分に若返りの魔法を繰り返しかけてもらうため、ラプンツェルを高い塔の中に閉じ込める、という設定でドラマは始まります。

 ここでポイントとなるのが、ラプンツェルは逃げようと思えば自力で逃げ出せるというところです。魔女は出かける時、特に鍵をかけてラプンツェルを閉じ込めるわけではない。ただ、繰り返しラプンツェルに言い聞かせるだけなのです。

「あなたのことを愛してるわ。外の世界はとっても怖ろしいの。あなたみたいな世間知らずのお嬢さんが出て行ったら、必ずひどい目に遭う。それがわかるから、私はあなたに出て行かないように言っているのよ」

 ラプンツェルは、塔の上の単調な暮らしに飽き飽きしているのですね。一度でいいから下界に出てみたくて、ゴーテルに許可をもらおうとするのですが、その度、ゴーテルの上記のような言葉にすっかり言いくるめられるのです。この後、ラプンツェルは、たまたま塔に逃げ込んできた盗賊フリン・ライダー(この男、女たらしという設定なんですが、フリン《不倫》という名前は偶然にしてはよくできていますね)に伴われ、下界に出るのですが、そこで、さんざんに葛藤するシーンがあります。

「ものすごく楽しい!(ヒャッホー)」「私って、ひどい娘ね、戻らなくちゃ(グスグス)」「絶対戻ったりしないんだから(ヒャッホー)」「私、ほんっとうに最低の人間よ(シクシク)」以下同じパターンの繰り返し・・・。

 この間フリン君、後ろで「やれやれ」みたいな表情して、ひたすら彼女の精神状態が落ち着くのを待ってるんですね。なかなか笑えるシーンであると同時に、背筋のゾクリとするシーンでもあります。ここまで魔女ゴーテルの言葉が、ラプンツェルの心を支配するとは。

 映画の後半でも、ラプンツェルを追いかける魔女ゴーテルは、巧みにラプンツェルの心を操ります。「あなたのことがとても心配だったのよ。それで後をつけて、あなたが襲われているのを見たの」「お母様の言うとおり、全部お母様が正しかった」「よくわかってるわよ、わかってる」

 このパターンって、人が人の心を支配する常套手段なのではないでしょうか?  他人を自分の思い通りにコントロールする、そのために使う言葉が「お前のためを思うから」「お前のことを愛しているから」「お前一人では世の中を生きていけないから」「お前がいないと私は生きていけないから」そして、自分の言うとおりに動かない時には、相手が失敗したタイミングを見計らって救いの手を差し伸べる。これでイチコロです。このパターンに捕らわれて、不幸な人生を送っている人が、世界にはゴマンといるような気がします。例えば

 「なんであんな暴力をふるう男がいいんだ?」「だって、彼は私のことを愛してくれてるのよ」

「なんであんな男に貢ぐんだ?」「だって、私がいないと彼は駄目になっちゃうもの」

 大丈夫、彼は他の彼女のことも愛してますし、あなたがいなくても、他の彼女が彼を援助してくれますってば。

 さて、ラプンツェル、魔女ゴーテルの、魔法じゃないんだけど魔力のかかったような言葉から、どうやって自由になることができるでしょう。そんな視点で見ると、別の楽しみ方ができる映画ではないかと思います。

 エンディングには賛否両論あるでしょうが、ネタバレになるのでそのあたりは自粛・・・。

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