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2011/08/20

乙一「箱庭図書館」感想

 読者に送ってもらったボツ原稿を乙一がリライト(リメイク)するという企画でできあがった一冊。6つの短編からなる。当然まったく別の話ばかりなのだが、そこを乙一が、共通の登場人物を設定し、共通の町での出来事とすることで、見事にまとまりを作った。それぞれの登場人物がその町で、ある時はすれ違い、ある時は関わりながら、実際に生き生きと動いているように感じられるのだ。さすがにプロは違う。タイトルの「箱庭図書館」というのも、この本の内容を的確に捉えていると思う。まさしく「図書館」を中心に、この小さな町の中で、登場人物たちはそれぞれの小さな(大きな)悩みを抱えながら生活しているのだ。

 プロは違うと言えば、本書は巻末に元ネタをネットで読めるよう、サイトを明記してある。最終話「ホワイト・ステップ」が気に入ったので、元はどんな話だったのか気になり、読んでみた。悪い話ではないが、セリフのやりとりばかりでほとんどのストーリーが進行するので、切実感がなく、なんだか小さくまとまりすぎているように感じた。乙一のリライトは、本人が後書きでも述べているが、いくつかのアイデアを加えることで、登場人物に動きを作っている。実際にいろいろな体験をすることが、登場人物の心の変化を促すのだということがよくわかる一作になっている。

 これから小説家になろうとする者は、本書はよい手引きとなるだろう。アマチュアの作を、プロがどのようにリライトするか、逆に言えば、アマチュアの作には何が足りないのか、本書と原作をじっくり読み比べるとわかるのではないだろうか。

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