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2011/04/24

三島浩司「ダイナミック・フィギュア」感想

 本の帯にはこう書いてあります。

二足歩行兵器の新たな基準作

「このジャンルを行くからにはいつかは巨大ロボットものを創りたい、3年ほど前から構想を練り始め、すべてのアイデアを絞り出したという感じです。(著者インタビューより SFマガジン)」

 日本のアニメ界には、「ガンダム」や「エヴァンゲリオン」などの巨大ロボットものの傑作が、いくつもあります。さて本作、過去の名作とは違う新たな設定やテーマをどこまで打ち出すことができているでしょうか? 

 などという意地悪な見方で本書を読んだわけではありません。理由は別にあります。なんと本作、主戦場が香川県なのです。香川県人ならわかる地名が次々に登場、瀬戸大橋を渡ろうとする敵を、海から那須与一よろしく射落とすシーンなど、ああ、きっとあの辺りなんだろうなと、予想ができるのですね。おかげで臨場感たっぷりに読むことができました。

 設定はやはり過去の名作と、どうしても比較されてしまうと思います。司令室のオペレーターは切れ者の女性たちであるとか、対キッカイとして建造されたロボットが、実はたったの3体で世界を征服できる戦略兵器であるとか、ロボットを操縦する若い3人のうち、一人は美少女であるとか・・・。エヴァとの大きな違いは孤介時間の設定ですね。自我を守る(外敵を排除する)ATフィールドの、まさに正反対を描いています。皆の自我が一つになってしまった時、人は勝手にどんどん流れ込んでくる他人の感情と、秘めておきたいのに流れ出してしまう自分の感情の渦に耐えられず、死んでいくという設定は斬新でした。本作では、孤介時間を引き起こす物体が剣山に落下し、半径20キロ以内の住民は(動物も)一部を除きほぼ全滅するのです。

 大災害を生き延びた者たちは、目の前で人が次々と死んでいくのを見殺しにするしかなかった自分への罪悪感で、心に大きな傷を抱えているという描写があります。東北の大津波をくぐり抜けて生き延びた方達にも共通するのではないかと、読んでいて胸が痛みました。

 ラストの戦闘シーンは、果たして読者のみなさん、納得できるのかどうか、微妙ですね。そんなんでいいの? と突っ込む人も多いんじゃないかと思います。でも、訴えようとするテーマそのものは、悪くないと思います。

 主人公が何人もいて、多視点で描かれるのですが、主語、あるいは語り手の特徴を示す修飾語がしばしば省略されているため、誰のセリフなのか、とまどうことが多々ありました。

 上下巻あわせて800ページ近い大作ですが、ぐいぐい読ませる緊迫感があります。かと思えば、妙に学園ドラマ風な、天然ボケキャラ的ゆるーい描写もあったりして、緩急がほどよい感じです。香川県人でSF好きな方は、迷わず読みましょう。

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