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2011/01/08

伊坂幸太郎「マリアビートル」感想

 「グラスホッパー」に続く、殺し屋さんたちのお話です。当然たくさん死者が発生しますが、娯楽作品ですので、目くじら立てずに読みましょう。

 本書は、読売新聞10月19日の「エンターテイメント小説月評」で紹介されていたのですが、その書評がたったの13行。他の作品(例えば北方謙三の「抱影」は38行、須賀しのぶの「神の棘」は34行)に比べて圧倒的に短いのはなぜ? と思いながら読んでみました。理由はすぐにわかりました。ネタバレになっちゃうから書評書けないんですね。たとえば、タイトルの「マリアビートル」・・・何の意味か書いてしまうと、最後に誰が生き残るかわかっちゃうので、書けません。

 伊坂氏の作品は、途中で出てくる何気ないセリフや、どうでもいいような小道具の一つひとつがすべて伏線で、それらが終盤にきて一気に収束していくという黄金のパターンを持っています。

 ところで私も、歳をとったものですから、短期記憶力がずんずん衰えていく今日この頃なのです。読んでいる時に「あ、これは怪しいぞ」と思っても、20ページも読み進めるとすっかり忘れてしまうなんてことはしょっちゅう。

 ですから、私は今回、読みながら「これはきっと後々のための伏線だぞ」と思ったところには、付箋紙を貼りながら読んでいくことにしました。

 全体の5分の1も読んでいないうちに、付箋紙が15枚を越えてしまい、本からワサワサとはみ出しています。「・・・もうやめよう。とにかく今は先を読みたい。」

 今回は悪役として、小憎らしい天才中学生が登場します。「どうして人を殺したらいけないんですか?」彼の質問に対し、殺し屋たちはそれぞれの見解を述べるのですが、いずれの答えにも少年は納得しません。この小生意気な少年をぎゃふんと(古いオノマトペだなあ)言わせるのは一体だれ? とにかくそれが知りたくて知りたくて、一気に読んでしまいました。

 伊坂氏の作品の、もう一つの特徴は、普通の人が知らないような知識をひけらかす登場人物たちが、やたらと多いという点です。今回も、人を殺してはいけない理由の他に、アル中に関する知識、ルワンダ大虐殺、セイヨウタンポポ、機関車トーマスなどについて、入れ替わり立ち替わり様々な人物たちが雑学を披露してくれます。おかげでずいぶん物知りになれます。(ちなみに、なぜ今回トーマスネタが使われたかですが、娘の情報によれば、伊坂氏の子どもさんが夢中だからだそうです。)

 逆に言えば、こういった雑学の部分を削ったら、本作には一体何が残るのか? ということにもなります。まあ、主にアクションシーンと、前述の伏線がほとんど、ということになりますか?

 人によっては「サラリーマンが、酒を飲みながら『おい、知ってるか、セイヨウタンポポってのはなあ・・・』などと自慢そうにひけらかす知識と、どう違うってんだ」ということになるかもしれません。

 ちなみに「人を殺してはいけない理由」についてですが、私も私の娘も「それは本能だろう。仲間を殺すことで興奮する猿もいるし、その逆の猿もいる。ただ、ヒトの場合、人殺しを本能的に嫌う集団のほうが、殺しの好きな集団よりも、社会的結束が強くて、結果的に長い氷河期を生き延びるのに適していただけなんじゃないのか。ただ、遺伝子には多様性ってものがあるから、殺す方が好きな本能を持つ人もいるってだけのこと。それがこの中学生だろ」というあたりで意見が一致しました。

 P368の、押し入れを開けるシーンで「あ、ラスト読めた」と思って娘に自慢したら、「私はp114でもう気がついてたよ」と返されました。悔しい。

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