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2010/12/31

「SPACE BATTLESHIP ヤマト」感想

 2010年は、小惑星探査機ハヤブサが、見事にイトカワの砂を持ち帰ったというニュースに、「宇宙戦艦ヤマト」ファンは、みな(たぶん)涙を流した年でした。

 なぜなら、両者には、共通点がありまくりだからです。
 地球を離れ、まだ誰も肉眼で見たことのない、はるか遠くの未知の目的地に向かうという設定。さらに、誰も助けてくれる事のない状況で、あるものを地球に持って帰らなければならないという使命が課せられているという点。
 一時は音信が途絶え、宇宙で行方不明になっていたハヤブサ。それを、スタッフたちがあきらめない不屈の精神力で、迷子のハヤブサを発見し、無事交信が回復。しかし、バッテリー残量が不足し、メインエンジンも壊れ、帰還はほぼ絶望視されていたのに、太陽電池パネルを帆の代わりに使って姿勢を制御し、エンジンの問題も回路の工夫でクリアして地球に帰ってくるという、奇跡的なドラマ。これが実話だというのですから驚きです。しかもラストシーンの美しさときたら。
 ハヤブサは、大気圏に突入して燃え尽きつつも、無事カプセルを切り離し、地表に送り込むという、もう健気としか言いようのないシーンでした。しかもカプセルの中には、ちゃんとイトカワの砂が入っていたという奇跡のご褒美まで!

 アニメ版ヤマトも、ハヤブサと同じく、次々に起きるトラブルの数々を、最後まであきらめない不屈の精神力と、知恵と勇気と決断力で一つ一つクリアしていくドラマ展開。時には人力でガミラスの設置した宇宙機雷を取り除くという驚きの展開。「人の手で動かすのだ。」のちにエヴァンゲリオンで、このセリフはオマージュとして使用されましたね。
 ラストシーンもハヤブサと同じく印象的でした。赤茶色く汚染された地球が、ヤマトの持ち帰った放射能除去装置のおかげで、元の美しい青さを取り戻すという演出で幕を閉じるのです。あれはよかった。

 アニメ版ヤマトにはさらに、別のよさもありました。
 当時としては斬新な、フルオーケストラ演奏によるテーマ曲。実に重厚な、ヤマトの巨体を見事に表現した音楽でした。さらに広大な宇宙の中、たった一隻で未知の星へ行かなければならない不安感を見事に表した女性ボーカルによるスキャット。
 毎回ラストで入るナレーション、「急げヤマトよイスカンダルへ。人類滅亡まであと○○日、○○日しかないのだ」という、いやがうえにも悲壮感を高めてくれる演出。当時の受験生は、このナレーションを我が事に置き換えて受験勉強に励んだでしょう。「○○高校受験まで、あと○日、あと○日しかないのだ」
 松本零士氏による、戦闘メカのデザインの素晴らしさ。スターシャの、現実的にはありえないデッサンが生み出した、人間離れした美しさ。
 しかも、設定として素晴らしいのが、放射能除去装置を、イスカンダルまで取りに来いという所。スターシャは、送ろうと思えば、波動エンジンの設計図といっしょに放射能除去装置の設計図も地球に送れたはずです。そこをあえて、「自分たちの未来を手に入れたいのなら、自分たちの力で取りに来なさい」と突き放す厳しさ。この設定が最高に素晴らしい。ただで手に入れた物に、人はありがたさを感じることはありません。自分の力で手に入れてこそ、そのありがたみがわかるし、人は前向きに生きようと努力をする。与えられることが当たり前と思っている人間は堕落するだけだと、塩野七生先生もおっしゃっていました。

 そんな「ヤマトファン」兼「ハヤブサファン」であるわたくし、「スペースバトルシップ ヤマト」12月30日、13:00上映の部を観に、ワーナー・マイカルシネマに行ってまいりました。

 以下ネタバレ多く含みます。これから観ようという方は、映画をご覧になってからお読み下さい。

・・・・・ネタバレ注意報・・・・・ネタバレ注意報・・・・ネタバレ注意報・・・・ネタバレ注意報・・・・

 客の入りは七割ほどか。私の右には優しそうなお父さんに連れられた、小学校低学年のお子さんが二人、左には品のいいおばあちゃんに連れられたお孫さんが一人。

 まず、感動した部分。
○ 曲。例のメインテーマは、オリジナルを丁寧に再現、重厚なオーケストラでずずーんと劇場全体を響かせてくれます。
○ 広大な宇宙空間を感じさせる美しいスキャットも、もちろん素晴らしい。そこへささきいさおのナレーションで「無限に広がる大宇宙」と来た日にはもう、これだけで感動ものです。
○ さらに、随所にかつてのオリジナルアニメの名セリフが散りばめられており、思わずにやりとするシーンがいくつも。声優さんも、かつてのあの人たち(伊武雅刀とか)が登場します。
○ ヤマトのCGは、ほれぼれします。主砲の連動するシーン、波動砲発射シーン、いずれも素晴らしい。コスモゼロの造形も見事です。このCGデータ、ウインドウズ上で動くソフトにして販売できないものでしょうか?
○ アナライザー、かっこよすぎます。こんなにかっこよくていいんでしょうか?  でも声優さんはアニメと同じ方というところが涙!
○ 登場人物のメイク、アニメ版を忠実に再現しようと、かなり努力しています。真田さんなんか、あれで眉毛なかったら完璧なのでは? しかも、脇を固めるキャストがものすごく豪華だったりします。山崎努やら西田敏行やら高島礼子やら緒形直人やら橋爪功やら柳葉敏郎やら・・・NHKの特別番組「坂の上の雲」に負けていません。

 次に、おいおい! な部分。
○ 「イスカンダルまで放射能除去装置を取りにきてください」ってセリフはどこへ行ったの? なぜこの部分をカット? すごく大事な部分なのに・・・。
○ 困ったらすぐに「波動砲」「ワープ」「自己犠牲」の三点セットに頼るって、いいんですか? まあ映画は短いから仕方ないんでしょうけど、でも、知恵で難関を切り抜けるのが「元祖ヤマト」のよさっだったのでは?
○ 主人公もヒロインも、なんであんなにすぐ他人を殴るんでしょう? 特に最初のシーンなんか、必然性もないのにいきなり殴っちゃってます。忍耐力や想像力が欠片もない、ただのバカに見えます。しかもヒロイン、しょっちゅう酒飲んでますし。脚本家は一体誰だ? (佐藤嗣麻子です。)こんな脚本でゴーサイン出した監督は一体誰だ? (山崎貴です。)
○ ガミラスが人間じゃない。なんで? 一つの星を滅ぼしてしまった後の、古代進のあの悲痛な叫びはどこへ? そもそも人間じゃないのなら、地球の環境を変えて移住するために、人類を滅ぼすという、戦争の大義名分ありまくりの秀逸な設定が、まったくの無駄になってしまうのでは?
○ いきなりラブシーン勃発。え、ここで? ずいぶん唐突ですね。アニメの古代君はもっと奥手だったと思いましたけど。両隣のお子さんたち、いかにもつまらなそうでした・・・。まあ、つまらんよな。
○ ガミラスがミサイルを発射しているのに、それを食い止めるための手立てを実施するために、どうでもいい(失礼)ドラマを延々十分以上・・・それだけ時間あったら、ミサイルとっくに地球に落ちてますよ。映画ではなぜか律儀にヤマトを待ってくれていましたけど。ちなみにこのシーン、両隣のお子さんたちにとってはラブシーン以上に退屈だったらしく、ひたすらポップコーンをぼりぼりかじってました。まあ、つまらんよね。

 上映中、落雷による停電で上映が一時中断されました。帰り際に「不手際でご迷惑をおかけしました。」と言って、劇場スタッフがサービス券を一枚くれました。ラッキー! これで正月に何を観よう!
 原作が名作だと、たいていリメイクは不満だらけになるものですが、本作もその例に漏れず。まあ、ただで観れたと思えば、腹もそんなにたたないかな。

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