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2010/08/22

森見登美彦「ペンギン・ハイウェイ」感想

 主人公は小学4年生の男の子。いきなり『一日一日、ぼくは世界について学んで昨日の自分よりもえらくなる。・・・(中略)・・・えらくなりすぎてタイヘンである。みんなびっくりすると思う。結婚してほしいと言ってくる女の人もたくさんいるかもしれない。けれどもぼくはもう相手を決めてしまったので、結婚してあげるわけにはいかないのである。』という、たいへんえらそうなモノローグで始まります。そして、この小説は、少年が大好きな歯科医院のお姉さんとの、冒険と別れの話なのです。ラスト『泣くな、少年』『ぼくは泣かないのです』とか、『アキヤマ君、泣いてるの?』『ぼくは泣かないことにしているんだ』とか、少年の主観視点で書かれた小説ですが、客観視点で読めば、少年アキヤマ君がぼろぼろ涙を流していることが丸わかりで、胸がキュンとします。

 そしてどうやら、少年アキヤマ君のことを好きであるらしい同級生ハマモトさんの気持ちも、少年はさっぱり気がつかない、いや知っているけど気がつこうとしないようにしているあたりも、やっぱり胸がキュンとします。

 そしてどうやら、少年アキヤマ君にとって、ハマモトさん(描写によると、どうやら知的な雰囲気の漂う美少女であるらしい)と歯科医院のお姉さんとのもっとも大きな違いは、おっぱいがあるかないかであるらしい。お姉さんと会う度に少年は『まるで丘のようにもりあがっているなあ』とか『なぜ彼女のおっぱいは母のおっぱいとは違うのだろうか』とか、読んでいて赤面してしまうようなことを臆面もなく考えたりするのですね。ハマモトさんに対しての感想ときたら『彼女はまだ大人ではないから、おっぱいは存在しない。』ですから。子どもが言うから許されるけど、それ、大人が言ったら絶対セクハラだろ(笑)!

 少年が、そういった世界の謎(おっぱいも含むらしい)の一つ一つに真摯に取り組む態度が、また健気です。同時に読者であるこちら側も、なぜ、人はある特定の人を好きになってしまうのだろう? 永遠に解けそうもない難問であるため、いつしか考えるのをやめてしまった例のあのことなんかを、もう一度考え直したりしているわけです。 

 この世に存在しないものが次から次へと出てくるので、一応ファンタジー系の小説に分類できると思いますが、でも本作、本当はファンタジーの要素はどうでもいいのかもしれません。

 少年の、切ない成長物語です。

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