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2009/09/05

DVD「パコと魔法の絵本」感想

 もとは演劇作品。それを「下妻物語」や「嫌われ松子の一生」の中島哲也監督が映画化・・・などという事前予備知識いっさいなしで観ました(妻がやたらと勧めるので)。すると、どこかで味わったことのあるテイスト。例えば、色使いはかなり鮮やかな原色系。これは確かに中島監督っぽい色です。いやそれ以前に、こういうケレン味たっぷりの涙と笑いのシナリオは、以前どこかで体験したような・・・見終わってから、もとが演劇であること、そしてその劇のタイトルが「ガマ王子VSザリガニ魔神」であること。脚本は後藤ひろひとであることを知りました。後藤ひろひと・・・思い出しました。昔「ダブリンの鐘つきカビ人間」で思い切り笑って泣かされた記憶があります。あのテイストが、本作にもあるのですね。納得。
 医者に「思い切り泣いたら涙は止まるよ」と言われて、いきなり二人同時に泣き出すとか、ラストとか・・・危険です。いきなり涙がどわーっととまらなくなるシーン目白押しです。
 「おまえがワシのことを知っているというだけで腹が立つ」とうそぶくクソジジイの大貫は、なぜパコの記憶に残りたいと思うのか。なぜ「誰かのために何かしてあげたい」と思うようになるのか。
 パコは美少女です。演技しているのは、ハーフの女の子だそうです。彼女が絵本を読む時の「ゲロゲーロ」には、強烈な破壊力があります。こんなかわいい女の子が、「大貫、きのうもパコのほっぺに触ったよね」と言ったら、大貫が無条件降伏するのも当然かも知れません。でも、もしパコが美少女じゃなかったら。もしパコの「ゲロゲーロ」がちっともかわいくなかったら。もしパコが深刻な病気じゃなかったら。もしパコがひとりぼっちじゃなくて、両親が生きていたとしたら・・・。果たして大貫はパコの心に残りたいと思ったでしょうか? かわいい美少女が不幸って設定は、安易だし反則なんじゃないですか?
 パコが毎日読む絵本「ガマ王子VSザリガニ魔神」も、ストーリーとしては何だかなあ・・・という感じのものです。池のみんながザリガニ魔神にやられてしまった。「許せない」と言ってガマ王子が立ち上がる。それって、単なる復讐ですよね。運良くザリガニ魔神を倒せたとしても、池のみんなは帰ってこないのではないですか? だったら何のために戦うのですか? 自己満足のためですか? 
 でも、本作は、安易だろうが反則だろうが、とにかく大貫が人生で初めて「誰かのために何かしてあげたい」と思い、そのために何をしたらいいのかを悩み、考え、実行する話なんです。大貫だけでなく、病院にいるみんなが、パコのために何ができるかを考え、行動に移す。その過程の一つ一つが、とてつもなく美しい、そんな映画です。 

 機会があれば、劇のほうも観てみようと思います。DVDで出ているようなので。

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