DVD「スカイクロラ」感想
押井守監督の話題作、 やっと見ることができました。しかもブルーレイディスクがレンタルできたので、大画面で細部にまでこだわりまくった映像を心ゆくまで堪能。本当に大満足の一本でした。
まず背景やメカニック関係ですが、ぼかしやハイライトを効果的に入れていて、リアルそのもの。ベスパがコーナーにさしかかると、シート下のバネがカーブの内側だけぎゅっと縮む様子まで描写するなど、徹底して細部にこだわっています。それに対して登場人物は、ほとんど輪郭のみ。色も必要最低限しか使わないというたいへん平面的な表現をしています。非現実的な描写と感じました。登場人物が、キルドレという特殊な生命であることの意味が、絵として強烈に印象づけられたような。
しかも、静止画として見た時には非現実的なのに、動きは超リアルなキルドレたち。ほんのわずかな、何気ない仕草。それを丁寧に時間をかけて一つひとつ積み上げていくように描写していきます。
自分たちキルドレは、戦争をするために創られた生命(キルドレ=キルとチルドレンからの造語と思われます)。ならば自分たちに生きる意味はないのか?
それを必死に探しあてようとしているように感じられました。
ストーリーも強烈です。国民に平和を実感させるために、企業が代理戦争をするという世界設定からしてまず、皮肉たっぷりです。キルドレは、そのために使い捨てされる人口生命体。国際紛争はすべて話し合い(=金)で解決するという平和な社会に、生まれた時からどっぷり浸かっている日本人に、平和のために犠牲になっている者たちへの思いを馳せろと、ひりひりするような感覚で訴えているように感じます。
老化現象のないキルドレたち。彼らは戦死した後、名前も姿も記憶も新しくなって甦り、再び戦場に戻ってくる。でも、新聞を読み終えた後、几帳面にそれを折り畳まないと気が済まないとか、煙草に火を点ける時に使ったマッチを必ず二つ折りにするとか、基本的なパーソナリティは以前と変わらない。リセットされたはずの記憶の中で、戦争という死と隣り合わせの状況の中で、彼らは自分たちが今ここに生きていることの実感を必死で探そうとする。いったい、生は死を思うことでしかリアルに感じられないのだろうか?
風や光、毎日繰り返される穏やかで何気ない日常の中に、生を感じる一瞬。そういった繊細な描写が印象に残る作品です。
劇中の音楽もすばらしいのですが、効果音も大変リアル。ぜひこの非現実的なのにリアルな世界を、よい環境の装置を使って体験して欲しいと思います。


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