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May 25, 2009

DVD「迷子の警察音楽隊」感想

 エジプトの警察音楽隊が異国の地イスラエルで迷子になってしまう話と聞いていたので、見る前から、きっとこんな話に違いないなどと、勝手に話を想像してました。そのうえ、DVDを借りる予約をずいぶん前からしていたのにもかかわらず、なかなか順番が回ってこなかったので、待っている間にまだ見ぬ作品へのイメージがどんどん勝手に膨らむ膨らむ(笑)。
 エジプトとイスラエルは、中東戦争のこともあり、たぶん仲が悪い国どうしなんだろうから、最初は敵対視したり、異国の文化にとまどったりしながらも、少しずつ相手も自分たちと同じ感情を持つ人間であることに気付き、お互いの文化を理解し合う話・・・みたいな。そんで、政治家同士は相手を理解しようとしなくても、警察音楽隊は両国の親善大使となりイスラエルの人たちと仲良くなっていって、いろいろ道を教えてもらったり、食事をお世話になったりしながら、お返しに演奏を聴かせて、そんで最後は目的地に着き、そのころにはメディアにこの音楽隊のことが大々的に取り上げられていて、一目見ようとイスラエルじゅうの音楽愛好家や、平和を望む人たちが集まり、大感動の演奏会でしめくくる・・・みたいな(笑)。 某日清製粉の「音楽に国境はないっ!」 みたいな?

 全然違いました。年老いた楽団団長が、過去を悔いる話でした。若くて軽率な行動をする自分の部下に、息子を重ね合わせて見る話でした。国籍に関係なく、人は所詮孤独なんだという真実を、あらためて見せつけられる話でした。そして人は、その孤独に耐えられず、愛という幻想をいつまでも見続けようとする。そんな哀しさがビシバシ伝わってくる話でした。

よかったです。

 ラストの演奏会のシーンで、この警察音楽隊の真の姿を見ることが出来ます。団長、指揮するだけじゃあなかったんですね。

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May 17, 2009

池上永一 「テンペスト」感想

 シェークスピアの「テンペスト」とは何の関係もありません。でも、一部で絶大な人気を誇っているようなので、借りて読んでみました。
 科試(科挙試験)の解答や外交のシーンは緊迫感があります。官僚、外交官の思想の駆け引き部分にも一部納得できる部分もあり、おもしろく読みました。でも、中盤に登場する宦官のキャラクターは、マンガチックで違和感ありまくりです。陰謀を張り巡らす頭脳派人物でありながら、妙な体技を持ち、格闘技では無敵。現実の人間なら、そんなこと絶対言わないだろうというようなセリフを、臆面もなくどんどん口にします。そんな人物を小説に登場させたら、リアリティがいっぺんで消え失せてしまうから、まともな作家なら絶対しません。最初からアニメ化を頭に入れたヤング向けの文庫本ならいざ知らず、上下2巻のハードカバーで、しかも琉球王朝の盛衰を描いた歴史小説として見た場合、どうにも違和感ありまくりです。その他の人物たちのセリフも、文語やオキナワの方言を多用した難解な政治の駆け引きがあるかと思えば、一転「○○、泣いちゃう!」に代表される漫画的口語が洪水のように押し寄せるなど、統一感が全然ありません。その場の勢いで、あるいは「もっとおもしろくしてやれ」という短絡的な考えで書いているように感じます。文体に関して言えば、もっと存在感のある文章を書く人は、ライトノベルの分野にもいくらでもいます。
 つまり、よい部分もあるんですが、おかしな部分もあり、バランスがまったくとれていない作品という印象を受けました。
 琉球独特の定型詩も出てくるのですが、当方、琉球の文法がまったく分からず(特に助動詞)しかも五七五に慣れた日本人のリズム感覚では、偶数のリズムはどうしても違和感を感じるため、これら作品中に散りばめられた定型詩が価値のあるものなのかどうか、まったく判断できません。オキナワの人になら、そのよさがわかるのでしょうか? 実際に聞いてみたら、そのリズム感がわかるのかもしれませんが・・・。
 主人公は、ドラマの筋立ての都合から、運命に翻弄されなければならない立場であるらしく、主体性にやや欠ける部分があるのも、ちょっと困ります。他の登場人物たちも、ささいなことで平常心を失い、自分の立ち位置を180度反転させて、あっさりと主人公を裏切りまくります。国の中枢を任され、冷静な判断をしなければならない立場の人間が、こんな判断をするなんて、いくらなんでもありえません。話をドラマチックにするためなら何でもありですか? うがった見方をすれば、そんな人物ばかりが宮廷を支配していたから、必然的に琉球王朝は滅びたのだ。一国を導く立場にいる人間は、感情に流されて判断してはいけない。作者はそれを描きたかったのだ。という風にもとれるのですが、さて・・・。
 修飾語は、つい使ってしまったというありきたりな表現が多く、逆に言えば、わざわざ書かなくてもわかるから、いっそ書かないでほしいと思う部分が多々あります。そういう冗長な部分は、読まなくてもだいたい予想できるので、どんどん飛ばすという、いわゆる斜め読みを駆使してしまいました。全体を半分に削れば、もう少し高評価になるかと。

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May 10, 2009

奥田英朗「オリンピックの身代金」感想

 東京オリンピック開催で国民が皆浮かれる中、ダイナマイトを使って国家に反逆する一人の青年と、それを阻止する刑事達を描いたサスペンス巨編です。「イン・ザ・プール」で一躍有名になった奥田氏の新作。ただし、「イン・ザ・プール」の伊良部医師のような、饒舌なキャラは登場しませんし、おちゃらけたバカ騒ぎもいっさいありません。各描写も非常に抑制が利いていて、これが同じ作家なのかと思うほどです。
 特にラストシーンなど、普通の作家ならあと10ページくらいは、ごちゃごちゃと書き足しそうな雰囲気がぷんぷんする終わり方なんですが、思い切って切り落としています。結果として、読後の感想は非常にずっしりと重いものになります。この後どうなったか、よく読むと、実はあちこちにそれとなく示してあるのです。ですから、作家がわざわざ書かなくても、読者はそのあまりに重い結末の意味を勝手に頭の中でイメージしてしまい、深いため息をつくという仕掛けになっています。
 総ページ数は500ページを超すのにも関わらず、無駄を省いた文体のため、非常に密度の濃い作品となっています。犯人の視点で書かれた章と、それを追いかける刑事の視点で書かれた章とを交互に、時間差をつけて提示しており、読者は第三者的な視点から本事件を追いかけることができます。また、読んでいるうちに、どちらの側にも同じくらい感情移入してしまい、同じように肩入れしてしまいます。ラストで両者が交錯するシーンはまさに圧巻! 構成力の勝利です。

 少し前に、映画「東京オリンピック」を見ました。聖火ランナーの走るシーンや、自衛隊機が空中に五輪の輪を描く開会式など、美しい映像が頭の中にくっきりと残っている状態で本書を読みました。おかげでラストシーンへの思い入れが半端じゃなくすごいものになってしまいました。また、本作の主人公が爆破テロの目標とする武道館や代々木体育館、東京タワーなど、日本が誇る建築物は、最近様々なメディアで再び脚光を浴びていることもあり、NHKの美術関連のテレビ番組などで何度も目にする機会が多く、この点も思い入れが深くなる要因となっています。

 格差社会という言葉が生まれるほどに、高学歴高収入層と低学歴定収入層がくっきりと別れてしまいつつある現代の日本。以前は資本主義でありながら、終身雇用制度など、共産・社会主義的なシステムがあちこちにあり、一億総中流という言葉が生まれたほどですが、それがここに来て、アメリカ流競争社会に代表される目先の利益最優先システムを次々に導入した結果、格差がはっきり目に見えてわかるようになってしまいました。本作はだから、現代版「蟹工船」と言えばよいのでしょうか。でも時代設定は東京オリンピックですから、もう40年以上も前です。なぜ今東京オリンピックを舞台に、格差社会をテーマにした作品を提示するのか。今目に見える形で現れた格差社会は、実は40年以上前からその芽が発生しつつあったのではないか。
 お国のために、オリンピックのために我慢しろ。それはわかる。でも現実に我慢を強いられるのは低学歴低収入層ばかり。この不公平を誰かが是正しなければならない。そしてそれは平成となった現在も同じなのだ。そのように読み取れる作品です。

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May 04, 2009

中村光児「ゴム銃オフィシャルガイドブック」感想

 表紙を見ただけでインパクトありすぎの本です。なんと、バルカン砲のように連射できるゴム銃の写真なのです。

 ゴム銃って何? いわゆる輪ゴムを飛ばす銃のことを指します。空気抵抗がなんちゃららなため、有効射程距離はほにゃららら・・・など、たかが輪ゴムの銃のはずなのに、かなりミリタリー的なマニアックさで一杯です。

 巻末にある作者の顔写真を見ると、優秀なエリート企業の重役っぽいおじさんの雰囲気が伝わってきます。会社ではきっと、たくさんの社員に指示を出しているであろう人が、オフではこんなマニアックな趣味に熱中して、しかも日本ゴム銃射撃協会会長までやって、そのうえこうして本まで出している・・・想像すると、なんだかほのぼのしてきます。

 内容は、会員たちが工夫を凝らして造ったゴム銃の紹介や、作り方必要な工具など。さらに、引き金の仕組みだけでも何ページにも渡って詳しく説明され、連射システムの図面から、照準の付け方のコツまで載っています。おまけに、コピーすればすぐ造れるようにと、板取図まであるという親切さ。

 作者は子供の頃、自作のゴム銃で魚屋の蝿をハントして遊んでいた(ちゃんと魚屋の主人の許可を得て)そうで、ゴム銃を使って蠅を撃つ際の注意点も、やたらとリアルです。いわく、「昆虫を狙うなら、直接命中させるよりも、壁や床に命中させ、その反射(跳弾)で仕留めなさい」とか「頭だけを狙える距離にまで近づいて撃て! うっかりお腹に命中させたら、あんな不都合やこんな不都合が生じて・・・」とか。このあたり、気持ち悪いので具体的には書きません(きっぱり)。

 ゴキブリも、一撃で倒せなかった場合は、これは蠅よりもっと大変なことになるのでうんぬん・・・。手負いのゴキブリが体液まきちらしながら、よたよたとこちらに向かって飛んでくる図を想像してしまえる人は、あまり読まない方がいいかも知れません(笑)。

 

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