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April 26, 2009

万城目学「プリンセス・トヨトミ」感想

 「鴨川ホルモー」の映画がまもなく封切りされることとなった、万城目学の新作です。

 「鹿男~」が奈良、「ホルモー」が京都と、古都を舞台にした作品が続いたので、次はどこかと思ったらなんと、今回は大阪。ただし、今回はしゃべる鹿が出てきたり、小さな鬼が戦ったりすることはありません。設定はかなり現実的です。あまりに現実的なため、かえってフィクションとしては嘘くさくなり、楽しめなくなっています。特にラスト近くの対決シーンは、なぜこの場面が必要なのか、首をかしげざるをえません。

 大阪側は、○億円も使ってこんなシステムを構築して人を集めたのはいいですけど、そのことに一体何の意味があるのでしょう? たくさん集まった大阪人たちが、結局何をするというのでしょう? 群集心理の恐ろしさを考えると、むしろ、危険な状態を作り上げているだけではないでしょうか? 東京側も、不正を暴くためになぜ、わざわざこんな危険な舞台が必要なのでしょうか? ほかにもっと効率的な方法があるでしょうに・・・。

 フィクションならフィクションらしく、思い切り嘘話で楽しませるのがこの人の持ち味だったと思うのですが・・・。今作はちょっとその辺り、空振りっぽいです。主役の男の子も、性同一性障害で苦しんでいるのですが、そういう設定で書くのなら、もっとこの障害が持つ本質の部分(性を決定する生命の仕組み)について、深く掘り下げて欲しかったと思います。

 タイトルが示すとおり、登場人物たちの名前は豊臣秀吉に関係のありそうなものばかりです。松平、鳥居、旭、真田、茶子、蜂須賀・・・しかし、名前見ただけで、誰がプリンセスなのか、だいたいわかっちゃいますね。

 「鹿男」や「ホルモー」のように、映像化するのは難しそうです。いえ、映像化はできるのでしょうが、いかにも絵的につまらなそうです。テンポもいまいちよろしくない。それなのになんと500ページもある! 切り詰めて300ページくらいにできませんかね? 

 何かと森美登美彦氏と比較されることの多い万城目氏。はっちゃけたドラマのおもしろさなら万城目氏は負けていないと思います。でも文体は森美氏に及びません。万城目氏の文体は、誰でも訓練次第で書けると思います。でも、森美氏の作品から、ふと立ちのぼるにおいは、誰にもまねできない、森美氏だけの文体がなせる技。

 今後もドラマティックな展開だけで勝負するなら、今のままで構わないでしょうが、森美氏のように、何でもない日常に潜む非日常を書こうと思うなら、自分だけの文体を身につけることは避けて通れない道となるでしょう。

 今後の万城目氏の進む方向やいかに。

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April 19, 2009

三崎亜紀「廃墟建築士」感想

 「となり町戦争」の作者の最新作です。

 四つの短編でできています。

「七階闘争」は「となり町戦争」の焼き直しです。何故こんなことで、ここまで争わなければならないのかが最後までわからない、たいへん理不尽な、でも世間にはそういうことって、よくあるでしょ・・・というメタファー(隠喩)的お話。「七階」の部分を、「地上アナログ放送中止」「ダム建設反対」などに置き換えて読みましょう。

「廃墟建築士」は設定として「廃墟」に価値がある世界ということになっています。新興の廃墟建築業者が、金儲けのために手抜き工事で廃墟を大量生産しているのを、伝統的工法を守る廃墟建築士が知り、心を痛めるお話。「廃墟」の部分を「織部焼き」「国宝級仏像」などに置き換えて読みましょう。

「図書館」は既刊「バスジャック」内の「動物園」の焼き直しです。そっくりです。

「蔵の守」は古い蔵の中にある物を、人の手に渡さないよう、蔵を守り続ける職人の話。「蔵」の部分を「石油」とか「ウラン」とかに置き換えて読みましょう。開けてはいけないパンドラの箱をメタファーしてますね。

この作者は一貫して、現実にはちょっとありえない話を、現実世界の不条理さのメタファーとして描いていますが、星新一みたいにもっと短くしてもいいのではないかと思います。

わざわざこんなにページ数かけてメタファーで語る必要あるの? 放射性物質がまき散らされるのが嫌なら「原子力発電反対」って直裁的に言えばいいんじゃない? 的な欲求不満が読後にもやもやと残ります。もっと短く(笑)。

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April 12, 2009

森見登美彦「恋文の技術」感想

 この春からうちの娘は、京都で大学生活を送ることになりました。そのきっかけを作ったのは誰あろう、森見登美彦氏であります。娘が高校2年のころ、森見氏の本を読んで「京都に行きたい。京都で暮らしたい」とつぶやいた(いや、叫んだ?)ような記憶があります。そのすぐ後、「今日から私は京都に行くため、受験勉強に入る!」と宣言したのでした。まさか本当に行くとは思わなかった。森見登美彦氏、恐るべし。あなたの書いた本が、一人の文学少女を京都の難関大学入学へと導いたのですから。

 本書はそんな森見氏の最新刊です。主人公は京都の大学院生。でも能登半島の研究施設に、クラゲ研究の助手として送り込まれ、毎日実験しては先生に怒られる日々。本書はそんな主人公から、京都の7人の友人たちへ書き送った手紙、書簡集です。その内容は主に、恋に関する悩み事相談。友人たちからの返事は、本作には登場しません。あくまで、主人公からの手紙だけです。でも、どんな返事が返ってきたのかはだいたい見当がつくようになっています。したがって、それぞれ違う友人に書き送った別々の手紙を、日付を照らし合わせながら読むことにより、京都でどういうドラマが展開していたのかが、多層的な視点で見えてくる仕掛けになっています。さらに、主人公は能登にいるのにも関わらず、京都の魅力がいっぱいです。読むほどに、京都で暮らす娘のことがうらやましく思われます。ああ、今頃はきっと、京都の大学生活を楽しんでいることでしょう。いいなあ・・・。

 最後、主人公が手紙の極意に少しずつ開眼していき、大団円に至る(であろう)過程は、なかなかドラマチックです。よくぞここまで成長した! と拍手したくなりました。ああ、これって、恋愛小説であると同時に、主人公が成長する話でもあるんだなあ。本の帯にもあるとおり、ほろ苦くて可笑しい、森見氏の魅力あふれた一冊です。

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April 05, 2009

菅広文「京大芸人」感想

 難関大学出身のお笑いコンビ「ロザン」の菅広文が書いた大学入試自伝である。

 菅は大阪府立大学中退、相方の宇治原は京都大学法学部卒業。確かに超高学歴コンビである。偏差値だとそれぞれ60代と70代なのだから。「芸人になった時に京大出身や言うたら、それだけで売りになるから」というのが京大に入った理由であるらしい・・・。

 読んでいると妻が「その本の作者って、どんな人なん?」と聞いてきた。「この間テレビに出とったよ」「ふーん、おもしろかったん?」「いや・・・まあ普通?」「なら読まんとこ」ドライな反応である。せっかく京大入ったのに、世間の主婦の目は厳しい!!

 本の内容は、お笑いよりも、相方の宇治原がどのような勉強方法で京都大学に一発合格したか、そちらのほうがメインになっている。受験生のためにいくつか要点を箇条書きしておこう。

○3年になったら、まず京大の赤本(過去問)を買って問題のレベルや傾向を把握し、1年間の勉強計画を立てる。ちなみに宇治原はこんな計画を立てた。

○4月から6月までは暗記

○7月から9月までは基本問題

○10月から12月までは応用問題

○1月、2月は過去問題

ちなみに授業がない日のスケジュールは

7時起床 8時まで食事等 8時~12時勉強 12時~1時食事等 1時~6時勉強 6時~9時食事とテレビ 9時~11時勉強 11時~12時風呂等 12時就寝

宇治原のあだ名は「高性能勉強ロボ」1日11時間の勉強時間である。「観たいテレビが10時にあったらどうすんの?」「録画して次の日の6時から9時の間に観る」「俺が10時に電話したらどうすんの?」「でえへんよ」

○日本史

・菅のやり方

 まず「縄文時代」なら教科書の縄文時代のところを読む。そして縄文時代の問題を解く。いい点が取れたなら次の「弥生時代」に進む。

・宇治原のやり方

 教科書をずっと読む。初めから終わりまで。読み終えるともう一度初めから読み始める。ずっとその繰り返しで問題をまったく解かなかった。

「お前、問題解けへんの?」「まだその時期じゃないから」「なんで教科書を最初から最後まで読むの?普通、時代ごとに読めへん?」「奈良時代、平安時代、鎌倉時代って憶えると平安と鎌倉どっちが先やった? ってなるやろ? 歴史はひと続きのドラマやと思ったらええねん」

○数学

・菅のやり方

 ひたすら問題を解き、答え合わせをする。

・宇治原のやり方

 ひたすら暗記。公式だけじゃなく問題と解き方を全部暗記。

「問題解けへんの?」「まだその時期じゃないから」「これ全部憶えるの?」「うん」「めっちゃ多くない?」「いや、数学は問題のパターンが少ないから同じような問題がテストによく出るねん。だから問題と解き方を暗記しておいて、テストで出た時に、これはあの問題だとわかったら、あとは数字をそのテスト問題に合わせて暗記した解き方に当てはめるだけでいいねん」

○英語

・菅のやり方

 英単語帳を暗記。

・宇治原のやり方

 教科書や問題集に載っている例文をまるまる暗記。

「単語帳で憶えへんの?」「単語帳で憶えても、出ない単語のほうが多いやろ? それやったら問題集や教科書に載ってる単語のほうが出やすいし、例文で憶えたほうが長文問題やるとき使いやすいやん」「どうゆうこと?」「たとえば『私はアメリカに2回行ったことがある』いう文章を憶えたとするやろ? ほんなら『彼はテニスを3回したことがある』という文章にも対応できるから、逆に単語憶えてなくてもだいたいの意味がわかるやん」

○国語

・菅のやり方

 必死で漢字や文法を憶える。

・宇治原のやり方

 新聞を読む。「新聞読んでたら時事もわかるし、コラムも書いてあるから小論文の書き方のお手本にもなるやん」

○理科

・宇治原のやり方

 理科は暗記ではなく、初めから問題を解く。「理科の場合は特に数字が変わってるだけで、前と同じ問題やったってことが多いねん。あと数学と違って語句を憶えなあかんけど『このような状態をなんて言いますか」のように解いただけで語句を憶えていけるような問題が多いから、何回も同じ問題を解いたほうがいいねん。ほんなら自然と暗記するやん」

○宇治原は教科書にアンダーラインを引かない。理由は「教科書に載ってることなんか全部重要やん」 (ごもっとも・・・)

○宇治原の暗記スタイル・・・「書く。声に出す。歩き回る」まず憶えたい事柄をノートに書き、小さい声でぶつぶつとつぶやき、歩き出す。これを4月から6月までひたすら続ける。(確かに歩き回るのは眠くならないしいいかも)

○9月からの問題集の解き方

・国語と社会は違う問題集を何冊もやる。

・数学と理科は同じ問題集を何度もやる。

「国語や社会の文系科目は問題の種類が多いからできるだけ問題をいっぱいやって、問題の種類を見ておいたほうがいいねん。逆に数学や理科の理系科目は同じパターンで、数字だけが変わっていることが多いから、同じ問題を何回もやってやり方を憶えたほうがいいやろ?」  

 菅は1年目は不合格だったが、2年目に宇治原の言ったとおりに勉強したら無事合格したという。さあ、みんな、参考になったかな? (いや、普通の人間には、こんなに暗記できっこないって!!)

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