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March 29, 2009

藤野千夜「少女怪談」感想

 こわ~い小学生の世界です。表紙はなんだかアキバ系アニメタッチの絵ですが、中身はさすが芥川賞作家です。

 第一話「ペティの行方」では自分のぶりっこが通用しなくなり、自分の世界の今後の雲行きが怪しくなるところで終わる美少女の話。
 第二話「青いスクーター」は女の子の気持ちをいつまでも理解できない、というよりむしろ逆なでするばかりの少年が、一人だけどんどん孤独のもてない少年になっていく話。
 第三話「アキちゃんの傘」は、父親といとこのお姉さんの関係に気づ かないふりをしようとして、でももうそれも無理なんだと気づいてしまう話。
 第四話「ミミカの不満」は、大好きな母親が再婚することになり、小4のくせに、テストでクラスで1番のくせに、社会に出て行こうとせず、母親の手の中で幼児ぶりっこしている女の子が、小3の男の子と触れあい、ちょっと変化する話。

 ああ、ヒトって、こんなに小さい頃から、破滅への道が持つ吸引力から抜け出せない業を背負っているんだなあ。そっちの道に進んじゃいけないとうすうす頭ではわかっているのに、やめられないんだなあ・・・とか、かなりおおげさな感想を持ってしまったりしました。

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March 22, 2009

新田義治「成功本はムチャを言う!?」感想

 本書はタイトルだけ見ると、たくさんの成功本を批判しまくる本のように思えます。しかし、内容はそうではなく、むしろたくさんの成功本の共通点を列挙し、分析したうえで、本を読んでも成功できない95パーセントの人たちにアドバイスを送るという形になっています。

 まずは多くの成功本の共通点を書き抜いてみましょう。

・目標を掲げろ。書け。口に出して言え。アメリカのハーバード大学の調査では、大学生の時目標を持っていた者(13パーセント)は、10年後に持っていなかった者の2倍の年収。口に出して書いていた者(3パーセント)はなんと10倍!
・プラス思考をしろ。コップに半分しか水がない→まだ半分も水がある。という風に!

・計画、スケジュールをたてろ。実行しろ。
・自分に投資しろ。
・感謝しろ。人の幸せを願え。
・人脈を作れ。これは後述のメンターを見つけるのが目的。
・好きなことをするだけでは成功しない。競争相手の少ない、成功しやすい分野でかつ、好きなことを仕事に選べ。
・メンター(お手本となる人、指導してくれる人)を見つけろ。
・負の考え方(自分にはできっこない)が潜在意識にある人は、過去のトラウマに向き合い克服しろ。

 さらに、成功した人の書くとおりにやっても、うまくいかない理由として
・成功した人と一般人とは性格が違う。特に勝利至上主義の成功者のやり方は、調和を大切にする人には受け入れられない。そもそも成功者の語る成功は、たくさんある人生の成功のうちの一つにすぎない。自分にとっての成功とは何かをまず考えろ。自分の性格は「智(考えること重視、美・興味・理解)」「勇(実行、達成すること重視)」「親(調和重視)」「愛(愛されること重視)」のどのタイプかを理解しろ。

とあり、かなり納得させられました。

 最後に「小手先のテクニックより、自分ができることを徹底しろ。それが成功の一番の秘訣だ。」と述べています。

 具体的には、「時間を守る、約束を守る。笑顔で挨拶をする。お世話になります。ありがとうございました。いただきます。ごちそうさまをつねに忘れない。人が困っていたら声をかける。ごみが落ちていたら拾う。」などなど。

 見ている人は、こういう地道な部分をちゃんと見て評価してくれるし、いつかチャンスをくれるというわけらしいです。

 本の企画としては、他の成功本からいいとこ取りをして、ちょっと刺激的なタイトルをつけて売ろうとしている出版社の姿勢がなんとなく透けて見えますが、内容そのものは、そんなに的はずれではないと思いました。

 

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March 16, 2009

DVD「落下の王国」感想

 世界各地で長期にわたってロケを行い、ついに完成。ほとんどCGを使っていないそうですが、その映像はまるでマジックのよう。色彩美、構成美をその目で見てください。一級品です。ぜひ大画面で!

 珊瑚礁の海をゆったりと泳ぐ象、どこまでも黄色の砂漠、くるくる回るイスラム教徒、出口のない迷宮、バリ島のケチャ、青い壁の町並、印象に残るシーンだらけです。

 現題は「The Fall」、ストーリーはまさにタイトル通り、いろいろ落ちる話です。時代は映画の黎明期、場所はアメリカ。主人公は小さな女の子アレクサンドリア。オレンジ農場でお手伝いをしていて木から落ち骨折入院。病院二階の窓から、下を歩く美人の看護師さんに手紙を落とします。ところがその手紙は、風のせいで、別の入院患者ロイの手に。彼は映画のスタントマン。落ちるシーンで下半身不随の重傷を負い、恋人にはふられ、世をはかなんで自殺を考えます。
 アレクサンドリアは、ロイが語る叙事詩(大ボラ話)の続きが聞きたくてたまりません。六人の個性豊かな(衣装も素敵な)男達は、はたして復讐を成し遂げることができるのか? ロイは、聞かせてあげるかわりに、モルヒネを薬品棚から取って来るよう少女に言います。
 普通の監督なら、この少女はまず間違いなく美少女をキャスティングするでしょう。しかし、本作は違います。前歯が抜けていて、ややぽっちゃり気味で色黒の、でも表情の豊かな愛くるしい女の子です。話が進むにつれ、この少女がどんどん魅力的に見えてきます。
 ロイの語るホラ話は、登場人物のキャラクターが、その時の彼の精神状態によって微妙に変わります。二人に関わりのある人たちも、突然役割を与えられてこのホラ話に登場したりします。例えば美人の看護師さんは、敵役のフィアンセとして登場。アレクサンドリアはハッピーエンドを期待してわくわく話を聞きます。でも期待を裏切る哀しい結末に、少女は「どうして死んじゃうの」涙を流す。ロイはハッピーエンドにできない自分の心の弱さを語る。自分の世界が絶望に満ちていると。その時少女はロイの見ている世界が、一面的なものに過ぎないことを、つたない言葉で指摘します。
 たいへんよく出来た脚本だと思います。
 オープニングとエンディングに使われる曲は、ベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章、通称「葬送行進曲」です。モノクロの落下シーンにドンぴしゃでハマっています。 

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March 10, 2009

豊島ミホ「恋愛素描帖」感想

 ミホ・・・と聞くと、島尾敏雄の読者は、ああ、あの奥さんか。とか思うでしょうが、もちろん別人です。最近「檸檬のころ」が映画化されて、ちょっと有名になったかもしれない豊島ミホの連作短編小説です。
 雑誌「ダ・ヴィンチ」に連載されていた時には、豊島ミホのファンである娘が毎回読んでいた様子。今回加筆されて一冊の本になったので、喜んで手に取ったはいいものの、「絵が連載中と全然違う!」と怒ってました。なんでも豊島ミホ、一時は漫画家を目指していたこともあるらしく、絵のほうもなかなかの腕前のようです。連載中は豊島ミホの描く、登場人物のキャラにぴったりな雰囲気のカットが、毎回楽しみだったとのこと。「なんでわざわざ他の人の絵を使うのか、出版社の意図がよくわからん!」と吠えております。
 作品を一言で言えば、中学2年生たちの青春群像劇。あるクラスの男女20名分の恋愛ストーリーが、一人分約9ページ前後の短さで次々語られます。ドラマは毎回、その章の主人公の視点による一人称の形で、描かれます。ただ、そのドラマを男の子の視点から描いた章の後に、同じドラマを女の子の視点から描いたり、第三者的立場の生徒の視点から描いたりしてあるところが面白い。同じドラマでも男女で感じ方に違いがあったり、登場人物のキャラクターによって、ドラマの受け止め方が違ったり。読んでいると、本当にいろんな考え方をする沢山の中学2年生たちに囲まれているような感覚になります。
 基本的に豊島さんの作品は、現実の世界に馴染めない、いつもどこかしらちょっと不機嫌な主人公が、あちこちにツンツンと棘を伸ばし、結果お互い傷つけあいながら、それでもきちんと前を向いて、パキッとした態度で歩いていくような雰囲気と受け止めております。本作も、いくつかの章で、そういう雰囲気がビシバシ出ており、その辺りが娘のお気に入りの要因らしいです。
 そうそう、目次も凝っていて楽しいですよ。

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March 03, 2009

DVD「ルオマの初恋」感想

 原題は「ルオマ的十七歳」つまり「ルオマの十七歳」となります。中国雲南省、ハニ族の美少女がヒロインです。地図で見ると中国南部に位置し、ベトナムと国境が近いようです。
 映像的には棚田の美しさがひたすら印象に残ります。それも田植え前、水を張り水牛で丁寧に耕している時期のものが画面一杯に、様々な角度、様々な時間帯で映されます。水面は鏡のように空を映すので、晴天ならば青に、夕暮れ時であれば橙色に一面が支配されます。棚田と棚田の境界線が絶妙な曲線を描き、人の作ったものでこれほど美しいものがあっただろうかと思うほど。ぜひ大画面で見るべき映像です。
 この美しい棚田をバックに、ヒロインが携帯音楽プレイヤーで聞く曲が、どうやらエンヤであるらしい。計算し尽くされた多重録音とイコライジングにより、徹底して耳あたりいい音に仕上げてあるエンヤの曲は、心を癒すBGMとして、たいへん効果的に使われています。もちろん農業従事者や現地の人が見たら、「勝手に美化するんじゃねえ。現実はこうじゃねえよ。」みたいな反論は出るでしょうが、娯楽作品として見た場合、ため息ものであることは間違いないでしょう。

 次に、ハニ族の風習、伝統文化がたいへん興味深い。二つほど紹介します。

・田植え前に、若い男女のグループが互いに泥玉を投げ合うことで豊作を祈ります。この時、自分の好きな人に泥玉を投げて意思表示する風習がある。
・結婚の前夜、祝いの席で、花嫁は本当に好きだった男と別れの杯を交わす。つまり、経済的な理由などにより、好きなんだけど結婚できなかったというケースが、この地方には(いや昔はどこでもそうかな?)多々あったということでしょう。
 いずれの風習も、映画の中ではストーリーにうまくからめてあって面白いです。

 メインのストーリーはわかりやすいもので、田舎の美少女がカメラマン志望の男と恋に落ち、都会の絵の具に染まりそうになる。という、よくあるパターンです。
ルオマの相手の男、優しいんだけど、地道に仕事をしてお金を稼ぐという事ができない性質の人です。金がないので、家賃は滞納しっぱなし。ルオマから買った焼きトウモロコシの代金が払えず、かわりに携帯音楽プレイヤーを貸し与える。家賃のほうは、つきあっている女に支払ってもらおうとしますが、男の煮え切らない態度に激怒した女から、ついに見放されるという始末。

 そんな男に、ルオマは少しずつ恋してしまいます。
 ルオマの愛らしい表情に、見ている方としては、この恋がうまく行かないで欲しいと強く願わずにはいられません。「こんな男といっしょになっても、絶対幸せにはなれないぞー。さんざん貢がされたあげく、別の若い女が見つかった途端に捨てられるのがオチだぞー」と、心の中で叫びながら見てました。

 男はルオマに、都会のビルでエレベーターに乗せてあげるよと約束します。ルオマはお祖母ちゃんに、行ってもいいでしょ? と聞きます。でも、お祖母ちゃんは何も答えない。翌日家を出て行くのはお祖母ちゃんのほう。

 セリフで多くを語らず、映像で語ろうとする作品です。ネタバレになるので書けませんが、特にラストの演出はよかったと思います。

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