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2009/03/16

DVD「落下の王国」感想

 世界各地で長期にわたってロケを行い、ついに完成。ほとんどCGを使っていないそうですが、その映像はまるでマジックのよう。色彩美、構成美をその目で見てください。一級品です。ぜひ大画面で!

 珊瑚礁の海をゆったりと泳ぐ象、どこまでも黄色の砂漠、くるくる回るイスラム教徒、出口のない迷宮、バリ島のケチャ、青い壁の町並、印象に残るシーンだらけです。

 現題は「The Fall」、ストーリーはまさにタイトル通り、いろいろ落ちる話です。時代は映画の黎明期、場所はアメリカ。主人公は小さな女の子アレクサンドリア。オレンジ農場でお手伝いをしていて木から落ち骨折入院。病院二階の窓から、下を歩く美人の看護師さんに手紙を落とします。ところがその手紙は、風のせいで、別の入院患者ロイの手に。彼は映画のスタントマン。落ちるシーンで下半身不随の重傷を負い、恋人にはふられ、世をはかなんで自殺を考えます。
 アレクサンドリアは、ロイが語る叙事詩(大ボラ話)の続きが聞きたくてたまりません。六人の個性豊かな(衣装も素敵な)男達は、はたして復讐を成し遂げることができるのか? ロイは、聞かせてあげるかわりに、モルヒネを薬品棚から取って来るよう少女に言います。
 普通の監督なら、この少女はまず間違いなく美少女をキャスティングするでしょう。しかし、本作は違います。前歯が抜けていて、ややぽっちゃり気味で色黒の、でも表情の豊かな愛くるしい女の子です。話が進むにつれ、この少女がどんどん魅力的に見えてきます。
 ロイの語るホラ話は、登場人物のキャラクターが、その時の彼の精神状態によって微妙に変わります。二人に関わりのある人たちも、突然役割を与えられてこのホラ話に登場したりします。例えば美人の看護師さんは、敵役のフィアンセとして登場。アレクサンドリアはハッピーエンドを期待してわくわく話を聞きます。でも期待を裏切る哀しい結末に、少女は「どうして死んじゃうの」涙を流す。ロイはハッピーエンドにできない自分の心の弱さを語る。自分の世界が絶望に満ちていると。その時少女はロイの見ている世界が、一面的なものに過ぎないことを、つたない言葉で指摘します。
 たいへんよく出来た脚本だと思います。
 オープニングとエンディングに使われる曲は、ベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章、通称「葬送行進曲」です。モノクロの落下シーンにドンぴしゃでハマっています。 

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