桂望美「平等ゲーム」感想
「県庁の星」が映画化されて有名になった桂望美の新作です。
時代は今から100年ほど先、瀬戸内海に島民1600人全員平等な島があるという設定になっています。姫路港を出発し、小豆島の南を通って1時間40分の距離ということですから、おそらく香川県でしょう。島を出る人がいたらその人数分だけ、新たに移住希望者を受け入れます。主人公は移住希望者の身辺調査や意思確認を行う勧誘係という職業に就いています。
・島民の財産は共有。島民が労働で得た所得は平等に分配する。
・島では競争がない。小学校の運動会は皆で手をつないでゴールテープを切る(これ、一時期小学校の運動会で流行りましたね~)。
・島では仕事は4年ごとに抽選で交代する。
・島では食費、住居費、光熱費は不要。
・島では住民たちの投票によってルールが決められる。
ワーキングプアにあえぐ移住希望者にとって、島での生活はまさにユートピアのように思われます。でも、これまで様々な時代と国で、ユートピア建設は何度も試みられ、いずれも失敗しているのですね。
本作も、島民のエゴから、島の運営に破綻が生じ、共同社会が崩壊するストーリーなのかと思いきや、そうではありませんでした。ただ、主人公が知らないところで、票をお金で買う慣習ができあがりつつあり(まるでどこかの国そっくり)、それを知った主人公が是正を求めると、逆に島から追放されてしまう、という筋立てになっています。
なぜ共産主義、社会主義は途中で挫折するのか? なぜ平等では人は幸せになれないのか? そのあたりの理由を、社会科学の専門書のような理屈ではなく、ドラマを通して読者に示してくれるので、すごく納得できますし、おもしろいです。
『社会のために生きているんじゃないからです。自分が大事です。その次に自分の好きな人が大事です。それと同じくらい自分の家族が大事です。その次に、自分や自分の大事な人が幸せに暮らせる社会も大事だと考えています。大事な順番でいうと、社会はずっと後なんです。』バーテンの岡本さんの台詞が心にしみます。
ユートピアで純粋培養されたため、悪意をまったく持たず、天然いい人・・・として描かれていた主人公が、達成感や嫉妬など、少しずつ人の持つ複雑な感情を知っていくことで、奥行きのある自我を獲得していくドラマがまたいいです。


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