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2008/12/28

斎樹真琴「地獄番 鬼蜘蛛日誌」感想

 題名を見ると、ちょっと引いてしまう人が多いと思います。また主人公が、生前は女郎という職業であったため、序盤はその仕事に関する生々しい描写があり、ここでやっぱり引いてしまう読者も多いかもしれません。しかし、中盤以後は神仏の存在意義を問う、たいへん熱のこもった力作となっています。芥川の「蜘蛛の糸」同様、罪を犯した者の救済がテーマとなっているのです。

 地獄に落ちた女郎の願いは鬼蜘蛛となり、閻魔様を地獄に引きずり落とし、わびを入れさせること。

『貴方は生きて苦しんでいる者が過ちを犯すその前に、生きてゆけると思えるような何かを与えていますか。出来ていないんなら、偉そうに人間を裁くんじゃないよ。』

『人間がどんなに拝もうと、貴方がたは助けが必要な者を放置している。人が行った見殺し(罪)を死後に神仏が罰するのならば、神仏が行った見殺し(罪)は、死後に人間が罰して良いはず。』

 口の達者な主人公は、閻魔様相手に言いたい放題。宗教に対して誰もが感じるであろう疑問を、ずばずば直球で投げかけます。口だけではなく、跳び蹴りが出るところもすごい。しかし閻魔様も負けてはいません。

『お主の全て(不幸)は母親のせいか?』

『生きてゆけると思えるような何かとは何じゃ。まさかその答を神仏に出させようというのではあるまいな。』

鬼蜘蛛は果たしてその答を見つけることができるのか?

ラストには、魂が浄化されるような感動が待っています。

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2008/12/20

佐渡裕/高橋敏郎「バーンスタイン名盤100選 LPジャケット美術館Ⅱ」感想

 今は亡き名指揮者レナード・バーンスタインのLPジャケットを100枚、カラー写真と解説で紹介したものです。

 CDと違って、LPレコードのジャケットは一辺30㎝あるので、結構見ごたえがあり、かつてのレコード会社はジャケットのデザインに随分凝ったものです。バーンスタインの場合は、カラヤンと同じく見た目ハンサムですし、指揮姿もかっこいいので、上半身アップの写真がよく使われたようですね。ただ、ちょっとナルシストっぽい感じがするので、引く人もいるかもしれません。

 私はバーンスタインは、LPだとドヴォルザークの新世界交響曲と、マーラーの巨人くらいしか持っていません(CDだと晩年の録音がいくつかあるんですけど)。

 巨人のジャケットは、作曲家マーラーの肖像画を、大きくスクラッチするように縦に白く弧を描いてあるのがとても印象深く、さらに斜めに光線が差し込む様は宇宙に神の存在を感じさせ、一度見たら脳裏に焼き付く感じで、今でもお気に入りの一枚です。

 あと、FMで聴いて衝撃を受け、その後ジャケットをレコード店で見て、これもやはり衝撃を受けたのがショスタコ第5番。赤い焦土をバックに両手両足そして首から上のない男性の石膏像、その白い肩。久々に本書で再会し、感激しました。

 クラシックのLPジャケットには、よく油絵が採用されていたのですが、それがまた強烈な印象のものが多く、あれは一体誰の描いた絵だったんだろうと、今でも知りたく思います。(ミュンシュの幻想やムラヴィンスキーのチャイコ後期三大交響曲とかは特に)この企画、さらに第3弾、第4弾と続けて欲しいものです。

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2008/12/13

松森靖夫「科学 考えもしなかった41の素朴な疑問」感想

 中学生の理数離れを憂う記事がやたら目につくようになりました。本書は実にいいタイミングで出版されたと言えるでしょう。

 さて、41の疑問のうち、個人的に知りたかったのは以下の通りです。

・なぜ津波が来る前に波が引くの?

・なぜ夜明け前には遠くの音が聞こえるの?

・なぜ鏡に映った像は左右は逆なのに上下は正しく映るの?

・乾電池は使うと軽くなるの?

・なぜ水族館の小さな魚は大きな魚に食べられないの?

・なぜタコ墨のスパゲティはないの?

・なぜ光の三原色を合わせると白くなるの?

 これらの疑問に対する回答は、拍子抜けするほどあっけないものもあれば、目からウロコ的なものもあって面白いです。一つの疑問が3分前後の読書で解決するので、ちょっとした空き時間に読むにはぴったり。

 巻末に「一生涯、科学する心を持ち続け、大いに科学を楽しみましょう」という作者からのメッセージがあります。テレビ番組も「なぜ?」「気になる」をテーマにしたものが多いですし、そういった疑問に丁寧に答えていく本書のような企画は、これからしばらくブームになるかもしれません。

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2008/12/07

DVD「ダージリン急行」感想

 アメリカ資本のインド映画です。

 冒頭の急行列車に飛び乗るシーンから、まったく観客を煙に巻く演出で笑えます。父の死後、男3兄弟が急行列車で母親に会うため旅をするというストーリーのはずなんですが、勝手で子どもっぽい行動ばかりするため、中盤で列車から強制退去させられます。あとは歩いたりバスに乗ったり・・・タイトルの急行列車、一体どうした(笑)?

 兄弟のくせに外見がまったく似ていない3人。性格もまったくバラバラです。でも、3男の書いた短編小説を、次男がトイレで泣きながら読んだりするなど、ところどころに兄弟の仲の良さがちらりと見えたりします。また、長男が食堂車で弟たちのメニューを、全部勝手に決めてしまうあたり、いったいどういう専制君主的性格なんだ? と思ってたら、終盤で理由がわかります。たんに母親のやり方を受け継いだだけだったんですね。

 その母親がまた、勝手に行方くらまして「私はここで必要とされているの」とか、自分の居場所探しやってるもんですから、せっかく遠路はるばる母に会いに来た3兄弟はガッカリ。でも、そのおかげで3人とも、旅に出る前よりもちょっとだけ自立できたみたいだし、お互いの心の痛みもわかりあえたみたいだし、そんな映画です。

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