斎樹真琴「地獄番 鬼蜘蛛日誌」感想
題名を見ると、ちょっと引いてしまう人が多いと思います。また主人公が、生前は女郎という職業であったため、序盤はその仕事に関する生々しい描写があり、ここでやっぱり引いてしまう読者も多いかもしれません。しかし、中盤以後は神仏の存在意義を問う、たいへん熱のこもった力作となっています。芥川の「蜘蛛の糸」同様、罪を犯した者の救済がテーマとなっているのです。
地獄に落ちた女郎の願いは鬼蜘蛛となり、閻魔様を地獄に引きずり落とし、わびを入れさせること。
『貴方は生きて苦しんでいる者が過ちを犯すその前に、生きてゆけると思えるような何かを与えていますか。出来ていないんなら、偉そうに人間を裁くんじゃないよ。』
『人間がどんなに拝もうと、貴方がたは助けが必要な者を放置している。人が行った見殺し(罪)を死後に神仏が罰するのならば、神仏が行った見殺し(罪)は、死後に人間が罰して良いはず。』
口の達者な主人公は、閻魔様相手に言いたい放題。宗教に対して誰もが感じるであろう疑問を、ずばずば直球で投げかけます。口だけではなく、跳び蹴りが出るところもすごい。しかし閻魔様も負けてはいません。
『お主の全て(不幸)は母親のせいか?』
『生きてゆけると思えるような何かとは何じゃ。まさかその答を神仏に出させようというのではあるまいな。』
鬼蜘蛛は果たしてその答を見つけることができるのか?
ラストには、魂が浄化されるような感動が待っています。


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