百田尚樹「ボックス!」感想
ボクシング版「一瞬の風になれ」です。
したがって、同級生に天才がいたり、同じ地区にとてつもなく強いライバルがいたり、最初は弱かった主人公がどんどん強くなって、ついには・・・みたいなストーリー展開もまったく同じです。ここまで一緒でいいんですか(笑)?
違いは主人公に彼女ができないこと。やっぱりボクシングですから、どこかストイックです。
私は「あしたのジョー」を中学生の頃にリアルタイムで読んだ口ですから、とことんストイックな主人公は大好きです。「そこまで自分を苦しめるのはなぜ?」「その先に燃えさかる一瞬があるから。真っ白に燃え尽きて、後には何にも残らないんだ。」夜の公園で交わす紀ちゃんとジョーの会話が、今も強く印象に残っているほどです。
| 紀 | 『矢吹君は寂しくないの? 同じ年頃の若者が町に海に山に青春を謳歌していると言うのに…』 |
| 丈 | 『俺は負い目や義理だけでボクシングやってる訳じゃねぇんだ。ボクシングってやつが好きだからやってきたんだ。 |
| 紀ちゃんの言う“青春を謳歌する”って事とはちょっと違うかもしれないが、俺は俺なりに今まで燃えるような充実感を何度も味わってきたよ、血だらけのリングの上でさ。 | |
| ほんの瞬間にせよ、眩しいほど真っ赤に燃え上がるんだ。 | |
| 燃えカスなんか残りやしない。真っ白な灰だけだ』 |
(「あしたのジョー」より)
本作は本当にボクシングに詳しい人が書いたようで、「あしたのジョー」や「はじめの一歩」とは違い、とてもリアルに試合が進行します。ノーモーションで繰り出される左ジャブの切れ味、その後に繰り出される右ストレートのおそろしさにゾクゾクし、読んでいる途中で思わず左ジャブを繰り返し練習したりしていました。100回ほど打った所で腕が痛くなりやめましたけど・・・。
ストーリーは三人称で語られるのですが、主人公の名で語る章、顧問の先生の名で語る章、それぞれ文章に温度差があります。読んでいて違和感を感じました。筆者は本業が放送作家だそうで、やや台本的な書き方なのかなと思いました。
あと、ラストの一文、ネタバレになるので伏せますが、あれはやめておいたほうがいいと思います。佐藤多佳子さんが苦笑いしますよ。あと、せっかくボクシング強くなったのに、それを私闘に使ってしまうのもやめてほしかったかなぁ。


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