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2008/11/24

DVD「東京オリンピック」感想

 北京オリンピック開会式の演出には賛否両論ありましたが、東京オリンピックの演出は、ブルーインパルスのジェット機がスモークで空中に五輪の輪を描き、平和の象徴ハトが一斉に飛び立つというものでした。映画はハトの大群に恐れをなす選手や、ハトのフン害に憤慨する選手、いっこうに飛ぼうとしないへそ曲がりのハトと戯れる選手など、テレビの中継では見られない、ちょっと変わったシーンにカメラを向けます。

 もともとは3時間以上あったものを、市川監督が2時間に編集しなおしたのが本作だそうです。印象的なのは冒頭のシーン、鉄球でビルを破壊するシーンで始まります。思わず「あれ、間違えて浅間山荘借りちゃったかな?」と思ってしまいました。各種会場を建築するためのシーンだったんですね。

 たくさんの選手や観客をカメラは次々に撮るのですが、美女は必ずアップです。それに対して男はたいてい集団でワンカット(笑)。

 見ていて驚くのは風景の美しさ。聖火ランナーが段々畑や海岸や瓦屋根の住宅街を、もくもくと煙を出す聖火を持って誇らしげに走るのですが、1964年の日本って、こんなに美しかったんだ・・・とため息が出るほどです。富士山バックに走るシーンもすばらしい。なんだか神々しさを感じるほどです。

 競技のほうは監督の趣味で(?)カットされまくりです。アメリカ対ソビエトのバスケット決勝戦なんかほんの数秒(笑)。そのかわり、女子バレーボール、いわゆる東洋の魔女の決勝戦は克明に撮っています。

 最後、ソ連選手のオーバーネットという、映画のストップモーションで見ても、なんだかわけのわからないポイントで日本は優勝を決めるのですが、その後の、勝ったのになんとも釈然としない様子の日本チーム監督を、カメラは延々と撮り続けます。

 さて、先に市川監督は男のアップを撮らない、みたいなことを書きましたが、例外はマラソンのアベベです。先頭を一定のリズムを刻んで孤独に走り続けるアベベを、監督はアップで、スローモーションで、ロングで、俯瞰で、さまざまな技法を使って撮り続けます。おかげで、当時哲学的とまで言われたアベベの表情に、たっぷりと感情移入することができます。

 北京オリンピックは、「おお、すげえ。金と人を惜しげもなく使ってるぜ」的な感動でしたが、本作で見る東京オリンピックは、それとはまったくベクトルの違う感動でした。自然に選手の内側からにじみ出てくる物を、カメラは見逃さず捉えた。そういった人の感情の揺れ動きに対する感動でははいかと思います。よかったです。

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