フランク・シェッツイング「深海のYrr」感想
作者はドイツ人です。
深海からやってきた脅威に対抗するため、人類はアメリカ合衆国に全てを託します。ハリウッド映画なら、米軍が奮戦して、世界を救いハッピーエンド、あるいはブルース・ウィリスが孤軍奮闘して米軍の危機を救いハッピーエンド! となるところでしょう。しかも、米軍の指揮を執る司令官は、瞳はブルー、でもアジア系美女のジューディス・リーときたもんです。(ちなみに私の奥さんはジュード・ロウの大ファン・・・)
でも、本作は最初に述べたように、ドイツ人が書いてますから、ハリウッド映画のようにはなりません。アメリカ合衆国は、最終的に屈辱的な敗北を喫します。ここから先はネタバレになるので内緒。
さらに本書のすごいところは、キリスト教の限界を鋭く突いている点にあります。ドイツ人ですからプロテスタントなんでしょうかね? 「神によって創造された我々は、地球で唯一無二の存在である」というカトリックの前提が、ガラガラと音を立てて崩れていく筋立てになっています。他の生物との「共生」が声高く叫ばれるようになった現代において、非常に説得力のあるテーマとなっています。
時代設定はほぼ現代。原油高が続き、石油に続く新たなエネルギーとして、メタンハイドレートが注目されていますが、本書はすでにそれを先読みしています。登場する科学者たちも、ほとんどが実在する研究機関で働く人々をモデルにして書かれています。そういうわけで、話そのものは壮大なSFなんですが、リアリティーはたっぷりです。だから、暑い夏に人類滅亡の危機で背筋を冷たくしたいという人にはぴったり。難点は、1冊500ページ以上、それが上中下3冊もあるという長さ・・・かな(笑)?


Comments
キリスト教限界説に同感です。
人間は行き着くところまで来たしまったと実感します。
Posted by: よっちゃん | February 25, 2009 at 09:36 PM