楊逸「ワンちゃん」感想
中国人作家の書いた日本語の小説です。さきの芥川賞候補にもなっています。
短編が二つ、いずれも主人公は中年女性で名前はワン(漢字は違うのですが)。
一作目に登場する王(ワン)ちゃん。彼女は、顔はいいけど金にだらしない旦那から逃げるため、はるばる日本にまでやってきます。以前は服飾関係の仕事をしていましたが、今は小金を持った中年(老年)日本人男性と、金銭的に困窮したり、一回目の結婚がうまくいかなかったりした中国人女性の国際結婚の仲介をしています。でも、息子に「母さんのようにはなりたくない。親父のように人生楽しく生きたい」と言われてボーゼン。さらに結婚の仲介役をしていて知り合った、実直でまっとうな仕事をしている日本人男性に心惹かれてクラクラ。でも彼にはもう中国のお嫁さんを紹介済みだし・・・。こうなったら唯一これが私の存在理由! と思って看病していた姑が死んでしまって涙ボロボロ。一体私の人生って何? みたいな、ストーリー的にはまあ、ありがちな話なんですが、ワンちゃんの感情表現が独特で面白いです。なるほど、この個性が芥川賞候補となった理由か。とか思いながら楽しく読みました。
二作目の万(ワン)ちゃんの設定はもっとぶっ飛んでいます。博士号を取るため、日本の大学で論文制作に励む女学生が、ふと恋する自分に気がついた時には、とっくに40過ぎのおばちゃんになっていた(しかも男性経験いっさいなし)という話です。そもそも、子どもとろくに接した経験もないくせに児童心理学の分野を選んでいる所からして、もう既にダメダメ感が強く漂います。そんなワンちゃんが、幸せな結婚生活を送っている友人にアドバイスをもらい、化粧で変身してあこがれの教授にアタックをかけようとするのですが・・・。ギャグ狙ってるんですかそれは? と突っ込みを入れたくなるような展開が続きます。かと思えば、生理不順を診てもらいに産婦人科に行くくだりがあり、こっちはなかなか残酷な描写だったりします。
普通に幸せを手にすることのできなかった中年女性の哀しさを、独特のユーモアを交えて描写しており、暗い話なのに、作者の優しい眼差しが登場人物に注がれていて、読後の印象はどこかほのぼのとしています。できれば日中の国交も、この作品のように、暗い過去からほのぼのとした未来に向けていけたらいいなと思うのですが、さて・・・。


Comments
萌えろ卓球部 拝読しました。面白かったです。これって実話ですよね。事実は小説よりも奇なり。
呼んで晴れやかな気分になりました。
Posted by: hiro | May 08, 2008 at 08:27 PM