西加奈子「こうふく あかの」感想
「こうふく」シリーズ第二弾。「こうふく あかの」と2冊並べると、見事なクリスマスカラーにくらくらします。かつて村上春樹が「ノルウェイの森」を出した時もこんな装丁で、電車の中で読むのがかなり恥ずかしかったのを思い出しました。
「こうふく みどりの」は女子中学生とその家族が主人公でしたが、本作は中年サラリーマンが主人公。他人からいい人と思われるために演技に演技を重ねます。当然、そのアンチキャラとして、そんな主人公の涙ぐましい努力なぞ我関せず、自分の道をひたすら行くマイペースな同僚とか、コミュニケーションがうまくとれない奥さんとかが出てきて、主人公を苦悩のどん底に陥れます。
そこにからんでくるのがアントニオ猪木。「こうふくみどりの」でも重要な役所として登場しました。私はちょうど学生時代に猪木がアックスボンバーで失神するシーンを見た口なので、闘う猪木が主人公とどうからむのか、どきどきのわくわくでした。本作はラストのカタルシスに見事に収束されていく様が非常に感動的です。
赤ん坊の出産シーンでは、芥川龍之介の「河童」を思い出しました。産まれてくる赤ん坊に向かって親が「この世にはつらいことや哀しいことがたくさん待っているが、それでもお前は産まれてきたいか?」と問うシーンが「河童」にはありました。本作からは、出産直後から様々な誹謗中傷が待ちかまえていることが確定済みの赤ん坊に対し、それでもこの世に産まれてきたいのなら、止めはしない。産まれて、そして精一杯生きろ。そんなメッセージが伝わってきたような気がしました。


Comments
はじめまして。
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アントニオ猪木をキーワードに、メッセージが感じられるような物語でしたね。
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Posted by: 藍色 | June 03, 2008 at 02:01 AM