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2008/03/17

小野不由美「丕緒の夢」感想

 小野不由美、久々の十二国記シリーズです。

 「黒祠の島」「くらのかみ」と、十二国記以外の作品ばかり続いたあげく、ぷつりと新作が途絶えてしまったものですから、これはもう十二国記の新作にはお目にかかれないかも知れない、と半ばあきらめておりました。たぶん、これまでの十二国記シリーズ執筆途上で蓄積してきた数々の漢字辞書データを抱え込んだワープロが、(パソコンではない! このあたり十二国記の後書き等参照されたし)耐用年数を過ぎ、とうとう逝ってしまわれたのではないか? などと勝手に考えておりました。

 ところが、今回こうして新潮社の雑誌「yom yom」に新作が発表されたわけですから、もう全国のファンが黙っているわけありません。おかげで今回の「yom yom」は相当の部数を売りさばくことができたのではないでしょうか?

 日本が世界に誇るファンタジー作家は何人かいますが、世界観がここまでかっちりしている現役の作家というと、上橋菜穂子と小野不由美の二人が挙げられるでしょう。一つの国の文化を小説の中で完璧に創り上げているのですから、すごいものです。我々が生きている現実社会では、異なる文化間でしばしば衝突が起きているわけですが、第一級のファンタジー小説で描かれる文化は、メタファーとなってわれわれ現実社会の課題を投げかけてくるのですね。

 今回の「丕緒の夢(ひしょのゆめ)」は、宮廷儀式を通して、そのプロデューサーが王にあるメッセージを伝えようとするお話です。この儀式というのが、最初は例によって大量に出てくる超難解漢字のオンパレードにくらくらとして、何がなにやらわからないのですが、次第に漢字に慣れてくると(私は難解漢字一覧表作りながら読みましたよ・・・)ここまで本当に一人の人間の頭の中で考えることができるのだろうかと、つくづく感心してしまいました。ひょっとすると、どこかの国にはかつてこのような儀式があったのではないか? 小野先生はそれを本歌取りして今回このような作品を書いたのではないか? などとと思えてくるほどです。

 ラストシーンはため息がでるほど、はかなく美しいものになっています。フィクションであるはずなのに、文字から音と映像が静かに立ち上がってきて、読む者の胸をきゅーっと締め付けます。

 ああ、ほんとうに待った甲斐がありました。ありがとう小野先生。

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