« DVD「UDON」感想 | トップページ | 映画「県庁の星」感想 »

2007/06/05

デボラ・ゴードン「アリはなぜ、ちゃんと働くのか」感想

 2001年発行ですからちょっと前の本ですね。

 サブタイトルは「管理者なき行動パタンの不思議に迫る」です。

 以前、アリはそのすべてが真面目に働いているわけではなくて、さぼっている奴もたくさんいる。でも、働いていたアリが死んだりすると、さぼっていたアリも改心して(?)ちゃんと働くようになる、というのを聞いたことがありました。そうか~、アリもサボりがいるんだ~と、妙に感心したものです。

 本書は、深さ2mの溝を掘って、コロニー全体のアリを全て捕まえて数えるなど、気の遠くなるような作業の末、少しずつアリ社会の正体に迫るという、ものすごくエネルギッシュな女性研究者の成果がぎっしり詰まっています。

 例えば3000匹の外働きのアリに対して、7000匹もの内部アリがいるそうです。仕事も分担しているんですが、完全固定制ではなく、巣保守アリ→廃棄物搬出アリ→偵察アリ→食料収集アリの順で仕事が切り替わるそうです。つまり食料収集アリは、働きアリの一生の最後の仕事なんだそうです。

 女王アリという名前とは裏腹に、彼女は一切の命令を働きアリに出さない。観察の結果、物理的にそんな命令を出す場面がない、というのも面白い。人間の中央集権システムとは根本的に違います。誰も命令していないのに、なぜアリたちは働くのでしょう? このアリ社会の不思議なネットワークシステムが、脳内のニューロン同士の相互作用とよく似ている。両方とも複雑系で説明がつくというあたりも、なるほどという感じです。

 なお、巻末には訳者で生物学者でもある池田清彦氏の解説が載っていますが、これがまた面白い。ゴードンがネオダーウィニズムの考え方でアリ社会を考察しているのに対し、構造主義生物学という別の立場で、ゴードンの研究成果を考察しているのです。

 つまり、アリがこのようなシステムを持っているのは、その方が生き延びるのに有利だったからだというのがゴードンの考え方。それに対し、たまたまこのシステムが結果として生き残っただけで、このシステムでなければ生き残れなかったわけではないというのが池田氏の考え方。

 そういうわけで、7000匹もの内部アリ(現代の人間社会で言うと、引きこもりとかニートになるんでしょうか?)を支える3000匹の食料収集アリ。内部アリなんてどう考えても1000匹で十分だろ。このおおいなる無駄に果たして意味があるのか? きっとあったに違いない。だからこれまで生き延びてこられたんだというのがゴードン。無いんじゃないの? システムの都合上たまたまこういう形になってるだけで、それがたまたま生き延びただけなんじゃないの? というのが訳者です。

|

« DVD「UDON」感想 | トップページ | 映画「県庁の星」感想 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/49249/15320900

この記事へのトラックバック一覧です: デボラ・ゴードン「アリはなぜ、ちゃんと働くのか」感想:

» アリはなぜ、ちゃんと働くのか/デボラ・ゴードン [仮想本棚&電脳日記]
アリはなぜ、ちゃんと働くのか/デボラ・ゴードン 副題には「管理者なき行動パタンの不思議に迫る」とあります。 アリが社会性を持つ昆虫であることは知られていますが、中央集権的ではなく管理者がいないという事実には驚きました。 「女王アリ」はいますが、彼女は人....... [続きを読む]

受信: 2007/06/17 07:13

« DVD「UDON」感想 | トップページ | 映画「県庁の星」感想 »