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2007/04/09

角田光代「八日目の蝉」感想

 Y売新聞朝刊に連載されていた作品です。このたびめでたく単行本として出版の運びとなりました。

 前半は逃避行です。どういう事情なのか、読者にはほとんど明かされないまま、ヒロインは他人の家に留守を狙って入り込み、そこで寝ていた赤ん坊を誘拐します。そして自分の子どもとして育てようとします。でも戸籍がないため、当然のように様々な困難が降りかかってきます。例えば、病気になった時に保険証を使っての治療が受けられません。

 後半はその赤ん坊が成人し、社会人となって、様々な場面で自分の過去とどう立ち向かっていくかが描かれます。彼女の過去を知る者が取材と称して彼女にアプローチし、彼女の心の暗部をえぐります。このあたりの描写が実に深いです。実の親と育ての親、どちらが自分にとっての家族と言えるのか? 

 また、前半では明かされなかった様々な事情が徐々にここで明かされていきます。このあたり、知れば知るほど複雑な気分になります。親らしいことをまともにできないのに親の外面だけは保とうとする人たち、確かに増えました。そういう親に育てられた子どもはどう成長するか。それが想像できない人たち。そのあたり昨今の風潮を痛烈に皮肉った作品になっています。

 さらに前半のヒロインは誘拐犯として実刑判決を受け刑務所に入所していましたが、その刑期を終え出所してきます。この二人がいつ、どこで出会うのか。いや、そもそも出会えるのか。連載中からもうドキドキしながら読んでいました。タイトルの深い意味も、読み進める内に「そうか、そういうことなのか」とわかってきます。

 ラストは私の地元、瀬戸内海がバックです。哀しい美しさがいつまでも読後の余韻として残る作品です。

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